お口の中には唾液(だえき)とよばれる液体が出ています。お口の中に唾液が出ていることが正常な状態ですから、普段意識することはあまりありません。
唾液が”食べる”という行為に関連することは、想像しやすいと思います。例えば、食べ物を目の前にすれば、たくさん出てきて食欲が増してきますし、場合によっては想像するだけでも出てきます。
しかし、唾液の量が減り、口が渇くと食事のとき食べ物を飲み込みにくくなります。
このことから、唾液の働きは食べ物を飲み込む時にスムーズに流すために潤滑剤の様な働きをしてくれていることがわかると思います。これはひとつの例ですが、唾液の働きには他にも様々な役割があります。
そこで唾液の担っている役割と、唾液が減少した時に起こりうることとその対策について解説します。
1.唾液とは?
唾液とは、お口の中に出される液体のことです。お口の中には唾液腺(だえきせん)とよばれる唾液を作り出すもとの部分があります。
唾液腺で作られた唾液は、導管(どうかん)を通り、唾液腺開口部(だえきせんかいこうぶ)というところから、お口の中に放出されます。唾液の成分は、その99.5%を水分が占め、残りが各種酵素、電解質で構成されています。
成人の場合、1日あたり1〜1.5[ℓ]程度出されます。ただし、加齢的な影響を受けやすい性質があり、30代をピークにして減少し始めます。
70代にはピーク時の3割ほどにまで減少してしまいます。また、唾液の分泌量は、時間により変化します。食事中は増えますが、睡眠中は減少する傾向にあります。
また、精神的な影響を過分に受ける傾向もあり、例えば、緊張すれば唾液の量は減少して口が渇いてきますし、酸っぱいものを目の前にしなくても想像するだけで唾液は出てきます。
2.7つの唾液の働き
唾液には、いろいろな役割があることがわかっています。
その役割とは、消化作用・お口の粘膜の保護作用・洗浄作用・殺菌作用・緩衝作用・再石灰化作用・排出作用です。
2-1.消化作用(食べ物を消化する働き)
消化といえば、胃や腸の役割の様なイメージですが、実は唾液も消化作用の一翼を担っています。
唾液の中には、βアミラーゼという酵素成分が入っています。これは、でんぷんを分解する作用がある消化液の一種です。
食べ物を噛めば噛むほど、唾液はたくさん出されます。言い換えれば消化液がたくさん出てくることになり、お米やパンなどの炭水化物が消化されることになります。
この作用があるおかげで、消化時の胃腸の負担を軽減することが出来ます。ただし、タンパク質を分解する酵素は含まれていないため、タンパク質を分解することは出来ません。
2-2.湿潤・保護作用(お口の中に傷が出来ない様に守る働き)
お口の中は、軟組織とよばれる舌や頬、唇などの軟らかい部分と、硬組織に分類される歯という硬い部分が共存しています。
歯は、身体の中で最も硬い、つまり骨よりも硬いという性質があります。そんな硬い部分が話をする時、食べる時、ずっと軟らかい部分に当たり続けています。
唾液には、軟組織部の動きを滑らかにする潤滑剤の作用があり、こすれて傷を付けるのを防いでくれています。
2-3.洗浄作用(自浄作用)
歯の表面などについた食べカスを洗い流す作用があります。
2-4.殺菌・抗菌作用(細菌が入ってくるのを防ぐ働き)
唾液にはリゾチームやラクトフェリンに代表される抗菌作用を持つ成分が含まれています。
これにより、お口を通して細菌がからだの中に侵入することを防いでくれています。
2-5.緩衝作用(お口の中を中和してくれる働き)
むし歯の原因は、ストレプトコッカス・ミュータンスに代表されるむし歯菌という細菌です。
むし歯菌が歯の表面に生息し、そこの付着物を取り込んで代謝すると、かわりに乳酸を排出します。この乳酸はpHが酸性です。この作用で歯が溶かされて穴が開き、むし歯になります。
唾液には、この乳酸により酸性に傾いたお口の中のpHを中性に戻す作用があります。こうした作用を緩衝作用といいます。緩衝作用が強ければ強いほどむし歯に強い環境を作り出してくれます。
2-6.再石灰化作用(むし歯を防ぐ働き)
むし歯になると自然に治ることはありませんが、むし歯に至る一歩手前の状態があります。
そんなときは、歯の表面が過度に白くなっています。唾液の中には、カルシウムやリン酸といったさまざまな無機物成分が含まれています。これらの成分が、むし歯の前段階である、歯の表面が白くなった状態のときに、元の状態に戻そうとしてくれる作用を発現します。これを再石灰化作用といいます。
2-7.排出作用(異物などをからだから排除しようとする働き)
毒素や異物がお口に入ってきたとき、唾液がまとわりつくことでからだを守り、排出しやすくします。また、体内に投与された薬物の一部が唾液中より排出され、血中濃度を減じる作用をいいます。
3.唾液が減ると起りうる5つの影響
3-1.むし歯になりやすくなる
唾液は、むし歯菌が作り出す乳酸を中和してくれる作用があります。
むし歯はこの乳酸が歯を溶かすことで起こることがわかっています。唾液の量が減少すれば、乳酸を中和する作用が低下して、乳酸が歯の表面を溶かすのを防ぐ力が低下してしまいます。
また、唾液の中に含まれる成分に、カルシウムやリン酸などの無機質があります。むし歯菌が乳酸で歯の表面を溶かし始めたごく初期の段階であれば、これらの成分のおかげで歯の表面を修復することが出来ます。
唾液の量が減ると、この歯の表面の修復力が低下します。
唾液には洗浄作用もあります。歯についた食べカスを洗い流してくれる働きです。
唾液の量が減りますと、洗い流す力が低下しますので、歯の表面などに食べカスが残留しやすくなります。
むし歯菌は、これら食べカスを栄養源として増殖していきますので、唾液の量が減ると、むし歯菌が増えやすい環境を作ってしまうことになります。
また、むし歯菌が食べカスを分解した後の代謝産物として、乳酸が産生されますから、乳酸の増加にもつながります。
このように、唾液の量が減ることは、むし歯になりやすい条件を作ってしまいます。
3-2.歯周病になりやすくなる
唾液の量の減少は、むし歯のリスクだけでなく、歯周病を進行させるリスクも伴います。
歯周病は、フォルフィロモナス(ポルフィロモナス)・ジンジバリスなどの歯周病菌が原因であることがわかっています。
唾液のもっている抗菌作用には、歯周病菌が増えすぎない様にコントロールする働きがあります。唾液の量が減ると、歯周病菌が増えるのを抑えることが難しくなり、歯周病を進行させてしまうことになります。
3-3.入れ歯が痛くなりやすくなる
歯茎は弱い部分です。入れ歯は、その弱い歯茎に乗っています。唾液の量が十分にありますと、唾液が潤滑剤の役割を果たしてくれますので、入れ歯がこすれて痛くなることはないのですが、唾液の量が減りますと、歯茎に直接入れ歯が接触するようになります。このために、入れ歯が擦れて、歯茎に傷を付けやすくなります。
また、総入れ歯の方は、唾液が入れ歯と歯茎をぴったりくっつける役割を果たします。硝子の間に水分があると、硝子同士が吸着して離れにくいのと同じ作用です。
3-4.口内炎が出来やすくなる
お口の中は、歯という硬い組織(=硬組織)と舌・頬・歯茎・唇といった軟らかい組織(=軟組織)から構成されています。
動きを伴う場所で、硬組織と軟組織が擦れ合うところは、からだの中には他にはありません。軟組織は軟らかくて傷つきやすいところですから、そこに歯があたりますと、容易に傷つき口内炎をつくってしまいます。
そこで、唾液が潤滑剤の役目を担い、軟組織と硬組織が直接触れあわないようにし、軟組織を保護しています。
唾液の量が減りますと、軟組織を守る作用が低下しますので、傷つきやすくなることで、口内炎を起こす可能性が高くなります。
3-5.カビがはえる
カビがはえると言うと驚かれるかもしれません。
口の中にできるカビは、カンジダという真菌が原因で出来ます。カンジダは常在菌といって、もともとお口の中にいる菌で、通常は免疫力のおかげで数が増えすぎない様に抑えられています。
体調が悪くなったりすると、免疫力が低下してお口の中に症状が現れてきます。
しかし、唾液の量が減ることでも、その抗菌成分が減少することと、粘膜を傷つけやすくなることで弱くなり抵抗力が低下しますので、カビが生えやすくなります。
4.簡単にできる唾液の量が正常か量る方法
唾液がどれだけ出ているかを計測する方法があります。ガムテスト計測法というもので、専用の道具も必要ないので、とても簡便に計測出来ます。
必要な物は、専用の無味無臭の特殊なガムとストップウォッチとコップで、これらがあれば量れます。
【10分間で10[ml]以上唾液が出ていれば正常です】
①まずストップウォッチを10分に設定し、ガムを噛みます。
②ガムを噛むことで出てくる唾液を飲み込まずにコップに全て出します。
③10分間それを繰返し、時間がくればお口のなかに残った唾液をガムごとコップに出します。
④コップにたまった唾液の量を量ります。
5.唾液を増やすためにできる5つのこと
5-1.水分補給
唾液は体内の水分量と関連しています。からだの中の水分が減少していますと、それに伴い唾液も減ってしまいます。
喉が渇いたと思えば、水分不足のサインかもしれません。水分を補給し、お口の乾燥を防ぎましょう。
5-2.ガムを噛む
噛むという行為は、唾液腺を刺激し、唾液の放出を促進します。ガムを噛むことも唾液を出すために有効な方法です。ガムを噛むことで唾液腺を刺激し、唾液を出しやすくしましょう。
5-3.食事の時にしっかりと噛む
食事の時に、かたちのあるものをしっかりと噛むことも大切です。少し噛んで飲み物で流して飲み込んでしまうことはよくありません。
できるだけゆっくりと回数を重ねて噛むようにしましょう。噛むことの副次的効果として、満腹中枢の刺激があります。しっかりと噛めば、満腹中枢が刺激されて、食べ過ぎを防ぐ効果も期待出来ます。
5-4.舌を動かす
舌を動かすと、舌の下にある舌下腺や顎下腺という唾液腺が刺激されますので唾液が出てきやすくなります。
そこで『あいうべ体操』という舌を動かす体操をすることで、唾液腺を刺激して唾液を出しやすくしましょう。
この体操は、非常に簡単です。まず、なるべく大きくお口を開けて「あ〜」といいます。そして、お口を横に引っ張るイメージで「いー」といいます。続いて、お口を出来るだけ前にとがらせて「う〜」といい、最後に舌を可能な限り前にピンと伸ばしまして「べ〜」とするだけです。『あいうべ体操』はさほど難しい体操ではありませんし、道具も必要ではありません。是非試してみてください。
5-5.唾液腺マッサージ
唾液を作る唾液腺は、舌の下、顎の下、耳の下に左右で対になり存在しています。
それぞれ舌下腺、顎下腺、耳下腺といいます。こうした唾液腺をマッサージをして刺激することも効果的です。具体的には、耳の下や顎の下をおや指で円を描くようにマッサージします。すると、唾液腺が適度に刺激されて唾液が出やすくなります。あくまでも痛くない程度でしてください。
まとめ
唾液の働きには、食べるという行為に関連した働きだけでなく、むし歯や細菌の侵入を予防したり、口の中を守ったりと、さまざまな役割があります。
普段は意識することはあまりありませんが、唾液が減ると、唾液が本来もっている役割が果たせなくなってきますので、その結果むし歯になりやすくなったり、口内炎が出来やすくなったりなど、さまざまな問題が出てきます。唾液は加齢的な影響で30代をピークに減少していきます。そこで、食べ物をしっかりと噛んで食べ、唾液を出しやすくする、マッサージをする、などを行い、唾液がしっかり出るようにし、健康な生活をおくるようにしましょう。
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