歯の本数は、成人の場合、親知らずを含めれば全部で32本、親知らずを除けば28本あります。
ところで、指は左右手足で20本あります。20本あるからといって、「1本くらい無くなってもいいや」なんて思う人はいないと思います。
ところが、歯はふつう見えないところにあるからか、そうは思わない人が中にはおられます。
しかし、指と同じく、同じ形の歯はひとつとしてなく、そのどれもがひとつひとつ異なる役割を持っています。ですから、そのどれもがひとつでも欠けると困る大切な存在で、30代で入れ歯など大切な歯をこれ以上失わない様に、そもそも歯を失う原因は何なのか?また、失ってしまったあとの治療法について、よく知っておく必要があるかと思います。
1. 歯を失う主な原因
歯は、さまざまな原因で減少していきます。では、なぜ歯は減っていくのでしょうか。
1-1. 虫歯
20〜30歳以下の年齢の場合、歯を失う原因としては、これが最も多いです。
虫歯を放置した結果、虫歯がどんどん進行して、治療出来なくなってしまうからです。
また、虫歯を放置した結果、歯の根の先に、膿の袋ができてしまうことがあります。これを嚢胞(のうほう)といいますが、大きさによっては抜歯しなければならないことがあります。
1-2. 歯周病
30歳以降になりますと、歯を失う原因として、これが最も多くなります。
歯周病は、歯周病菌が歯周組織とよばれている歯を支えている骨や歯ぐきをおかしていく病気です。
はじめのうちは、歯ぐきが赤く腫れたり、膿んだりするくらいですが、これが進行していきますと、歯を支える骨を溶かしていくのです。
歯を支える骨が減っていきますと、だんだんグラグラしてきます。その結果、たとえ歯に虫歯がなくて健全な状態であったとしても、抜かざるを得なくなるのです。
1-3. 外傷
交通事故やけんかなどで、強い力が歯にかかることにより、歯が抜けてしまうことがあります。これは、前歯に多いです。
きれいに抜ければ、早いうちならばもう一度植えることも可能ですが、歯が折れていたり、歯周病で骨が弱っていたりすれば、植え直すことは難しいことがあります。
1-4. 腫瘍、その他
顎にも悪性腫瘍ができることがあります。顎骨中心性癌(がっこつちゅうしんせいがん)や歯肉癌などです。
もし、悪性腫瘍ができたならば、腫瘍切除手術を行なう過程で抜歯をすることもあります。
また、良性腫瘍であっても、例えばエナメル上皮腫(じょうひしゅ)とよばれる腫瘍のように、摘出手術の際に抜歯が必要になるとこともあります。
2. いくつか歯を失ったときの治療方法
2-1. 保険診療
保険診療で行なうなら、ブリッジと部分入れ歯になります。
2-1-1. ブリッジ
ブリッジとは、歯を失った部分の両隣の歯に被せ物を入れて、失われた部分につける人工歯と繋げるタイプの被せ物です。
部分入れ歯とは異なり、一度つければ外れません。また、食後の歯みがきがし易いように形作られていますから、部分入れ歯よりは歯みがきにかかる手間が少ないです。
けれども、歯を削らないと入れることができませんから、歯を削ることによってそこから虫歯になったり、歯がしみてきたりする可能性があります。
2-1-2. 部分入れ歯
部分入れ歯とは、残っている歯に金具をかけて安定を図るタイプの人工歯です。
ブリッジとは異なり、歯を削ることはないのですが、ブリッジよりも一回り大きいため、違和感を感じる事が多く、また、入れ歯がぴったりと合っていないと、入れ歯の裏側に食べかすがたまるので、毎食後外して洗わなければならず、慣れるまで苦労することがあります。
2-2. 保険外診療
保険外診療を選びますと、見た目に優れたものが選べます。
2-2-1. 保険外診療のブリッジや部分入れ歯
保険のブリッジの場合、前歯以外の歯は基本的に銀歯になります。
保険外診療のブリッジの場合、奥歯も含めて白くすることが出来ます。また、金属アレルギーのある場合は、金属をまったく使わないセラミックのみのタイプを選べますので安心です。
また、部分入れ歯の場合は、保険診療では金属製の金具を歯にかける必要がありますので、見た目がよくありません。
保険外診療の部分入れ歯であれば、目立ちにくいタイプにすることや、設計によって見た目を回復することが出来ますので、一見すると入れ歯を入れていることに気がつかれにくいように出来ます。
2-2-2. インプラント
インプラントとは、人工の歯根を顎の骨の中に入れて、その上に差し歯をつけるタイプの人工歯です。
このインプラントの利点は、歯を削ることもなく、毎食後外したりする様な手間がかからないことです。見た目もブリッジと比べてもきれいです。
隣の歯を削らないので、歯がしみたり、削ったところから虫歯になるリスクも軽減することが出来ます。
ただし、利点がある反面、コストやリスクが高いのが難点です。
3. すべての歯を失ったときの治療方法
3-1. 保険診療
歯がすべて無くなってしまったときは、保険診療で治療するなら総義歯しかありません。
一般的にいう”総入れ歯”です。保険診療で対応出来る総義歯は、レジンという合成樹脂のみ用いたタイプの義歯になります。
3-2. 保険外診療
保険診療でなければ、いくつかの選択肢があります。ただし、どれも費用が高くなってきます。
費用はそれぞれの歯科診療所において設定されていますので、主治医の先生と相談してください。
3-2-1. 金属床義歯
総義歯の内面に、コバルトやチタンなどの金属を使うタイプの義歯です。
保険診療の合成樹脂のみを用いた義歯と比べて、厚みを薄くすることが出来るうえ、安定感・フィット感も保険診療のものと比べて優れています。
金属部分があるおかげで、食べ物の温度を感じやすくなります。このようなことにより、つけ心地は非常に良いです。
ただし、保険外の材質を使用したから、必ずしも上記の様な良い入れ歯になる訳ではなく、そもそも歯科医師と歯科技工士の技術レベルが非常に大切になります。
3-2-2. インプラント
インプラントとは、人工の歯根を顎の骨の中に入れてることで安定を図るタイプの人工歯です。
歯をすべて失った場合、片顎で14本分歯がなくなるわけですが、14本インプラントを入れることはまずありません。
咬み合わせている歯の数にもよりますが、4〜8本程度入れて、上部構造とよばれる差し歯の部分を12〜14本繋げたブリッジタイプにして咬めるようにします。
3-2-3. インプラント義歯
インプラント義歯は、インプラントとは異なり、インプラントを入れるところまでは同じなのですが、その上に総義歯入れます。
この場合は、インプラントは4本だけ入れることがほとんどです。何かと不安定な総義歯の安定を、インプラントを入れることで向上させます。
インプラントと比べると、総義歯が入る分、違和感が大きいですが、治療期間は短く、費用もインプラントと比べると低く設定されていることが多く、下げることが出来ます。
4. 歯をこれ以上失わないために
失った歯は二度と戻ってくることはありません。そして、歯を失った場合に、いくつか治療方法があるのはありますが、どれにもデメリットが伴います。
4-1. 歯を失ったときの治療方法のデメリット
4-1-1. ブリッジ
たとえば、ブリッジですと、両隣の歯を削らなければなりません。
固定式であるが故に、人工歯部の歯みがきは、歯間ブラシなどの歯ブラシ以外の道具も使わなければ、非常に困難です。
もし、歯みがきをおろそかにしますと、ブリッジを支えている歯が虫歯になったり、歯周病になったりして、ダメになってしまいます。
また、丁寧には磨きをしていても、失った部分の歯が本来受け止めていた、食事の際にかかる力(これを咬合力といいます)をブリッジの支えとしている歯が負担することで、こうした歯が負担に耐えきれずに、折れてしまうこともあります。
4-1-2. 部分入れ歯
お口に合わない部分入れ歯の場合ですと、食事のたびに入れ歯の内側に食べ物が挟まりますから、痛みを伴ったり、うまく噛めなかったりとデメリットがあります。
お出かけや外食の際など、こうした点は、非常に不自由です。また、残った歯に金具をかけて安定を図っているのですが、入れ歯の設計が悪いと入れ歯を外したり着けたりする際に、金具がかかっている歯に、余計な力がかかるものですから、それが原因で歯が弱まることもあります。
4-1-3. インプラント
インプラントは、ブリッジのように歯を削ることもありませんし、人工歯の分の咬合力を支えの歯に負担させることもありません。
部分入れ歯のように、歯に金具をかけることもありませんし、食後に外して手入れをする必要もありません。しかし、高価です。しかも、入れればそれでおしまいということはなく、普通の歯よりも念入りに丁寧に歯みがきをして、定期的に歯医者でプロのメンテナンスを受けたりしてこまめに清潔にしていないと、インプラント歯周炎など、いずれダメになってしまいます。
まとめ
歯を失った場合の、それぞれ治療方法には一長一短ありまして、本物の歯のように優れたものはありません。
30代で入れ歯など、これ以上の歯を失わないようにするために、日頃の歯みがきを、しっかり丁寧に行ないましょう。虫歯も歯周病も、原因は虫歯菌や歯周病菌といった細菌です。歯をきれいな状態に保つことで、虫歯菌や歯周病菌の活動をおさえることが出来ます。そして、定期的に歯科医院を受診し、日常の歯みがきではとりきれない汚れ(プラーク)や歯石の除去をしてもらってください。
こうして、歯を守って、少しでも長く多く残し、いつまでも自分自身の歯で健康に生活出来るようにしましょう。
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