2021.03.25

虫歯の進行度別の治療法と進行を遅らせる方法

虫歯の進行度別の治療法と進行を遅らせる方法

毎日歯磨きをしていても、気が付くと虫歯ができてしまっていることはありませんか?
歯が痛くなってから気が付くこともあれば、痛くないけど定期検診で見つかることもあるかと思います。
痛みのある虫歯と痛みのない虫歯はどう違うのでしょうか。また、できてしまった虫歯の進行を遅らせる方法があればいいですよね。
今回は、虫歯の進行度についてと、進行を遅らせる方法について説明します。ぜひ、参考にしてみてください。

1.虫歯の主な原因とメカニズム

歯を磨かなかったり磨き残しがあったりすると、虫歯になることは広く知られていると思います。具体的には、どんなことが起きているのでしょうか。

1-1.虫歯の主な原因

虫歯ができるには「歯」「細菌」「糖」の3つが関係します。この3つが揃った状況で、ある程度時間が経過すると、虫歯ができ始めると言われています。糖の中でも、ショ糖、ブドウ糖、果糖が虫歯の原因となります。

1-2.虫歯菌とプラーク

一般的に虫歯菌と言われている細菌は「ミュータンス連鎖球菌」です。ミュータンス連鎖球菌は歯に住み着いている細菌なので、基本的には歯がある人ならば誰でも持っている細菌です。
このミュータンス連鎖球菌は、食べカスの中のショ糖をエサにバイオフィルムの元を作り出します。そして、そこにさまざまな細菌などがくっつくことで歯の表面にバイオフィルムが出来上がります。このバイオフィルムのことを一般的にプラークと言います。

1-3.虫歯のメカニズム

プラークはこすりとるなど物理的に取り除かない限り、歯にずっとくっついています。
このプラークの中でミュータンス連鎖球菌がショ糖、ブドウ糖、果糖をエサにして酸を産生します。プラークの中でたくさん酸が作られ蓄積していくことによって、歯の表面が酸によって溶け出します。この溶け出した状態を「脱灰」といって、虫歯の始まりとなります。

2.永久歯の虫歯の進行度合い

虫歯には、痛みのある虫歯と痛みのない虫歯があります。
この違いは、大きく2つに分けられます。また、虫歯には進行度合いが決められています。
虫歯の進行イメージ

2-1.痛みのある虫歯と痛みのない虫歯の違い

当然ながら、神経が残っている歯に虫歯ができると痛みが生じます。逆に言えば、神経を取ってしまった歯に虫歯が出来た場合、痛みがほとんど起きないため重症化しやすいのです。また、神経のある歯でも、虫歯の深さによっては痛みが生じないことがあります。
歯の神経図

2-2.初期エナメル質う蝕(CO)

まず、う蝕とは虫歯のことを言います。
歯の表面が白く濁っていたり、茶褐色に色が付いていたりするけれど、穴は空いていない状態を初期エナメル質う蝕(CO)と言います。
この段階では痛みはありません。検診では要観察がとされています。

2-3.エナメル質う蝕(C1)

歯の一番外側には「エナメル質」という、体の中でも最も硬い組織の1つがあります。このエナメル質の部分に穴が空いている状態をエナメル質う蝕(C1)と言います。
エナメル質には刺激を歯の神経に伝える構造はないので、この段階では痛みは生じません。

2-4.象牙質う蝕(C2)

エナメル質の内側には「象牙質」という組織があります。この象牙質まで虫歯が進んでいる状態を象牙質う蝕(C2)と言います。
象牙質には刺激を歯の神経に伝える構造があるため、象牙質まで虫歯が進むと痛みが生じるようになります。
この場合の痛みは、冷たいものがしみたり、噛んだ時に響いたりすることが多いです。また、大人の虫歯では進行が遅いと、象牙質の内側にある神経を守るために防御反応として象牙質が部分的に分厚くなることもあります。

2-5.歯髄まで到達したう蝕(C3)

象牙質の内側、歯の真ん中には「歯髄(しずい)」と呼ばれる歯の神経があります。歯髄は痛みを感じる他にも、血管もあるので歯に内側から栄養を送ることもしています。
この歯髄まで虫歯が進むと、何もしなくても痛みが出たり、温かいものがしみたりします。
ときには、夜も眠れなくなるほどの激しい痛みが起こることがあります。ある程度歯髄が虫歯などで刺激を受け続けると歯髄は死んでしまい、腐って膿がたまって、根の先や歯茎が腫れることがあります。

2-6.根だけ残った状態のう蝕(C4)

虫歯がどんどん進んでいくと、だんだん歯の頭の部分が欠けて無くなっていき、根っこだけ残ります。
この状態が続くと、根の先に膿が常に溜まっていることが多く、悪化すると根の周りの骨を溶かしたり、重症化すると蓄膿症を引き起こしたり顎の骨が骨髄炎になったりすることもあります。

2-7.二次う蝕

一度虫歯を治して詰め物や被せ物をしたあと、その詰め物や被せ物の境目から虫歯ができることを二次う蝕と言います。
見た目は小さくても、詰め物や被せ物の下や内側で大きく拡がっていることが多いです。

2-8.根面う蝕

歯周病などで歯茎が下がり、歯の根っこが見えているような状態のとき、歯の根にも虫歯ができます。これを根面う蝕(こんめんうしょく)と言います。
歯の根っこの表面にはセメント質という組織があります。セメント質には刺激を歯の神経に伝える構造はないので、痛みが起こることはほとんどありません。

3.虫歯を悪化させる習慣

3-1.歯磨きの習慣がない

虫歯の原因は、歯についた細菌や汚れを取り残したままでいることです。
食後や起床後、就寝前などに歯磨きをする習慣をつける必要があります。食後に毎回歯磨きをすることが理想的ですが、外食なので歯磨きが出来ないときもあると思います。そんなときは、せめてうがいをするだけでも虫歯になるリスクを低くすることができるでしょう。

3-2.間食が多い

普段お口の中は唾液の効果によって中性に保たれています。しかし、間食が多いと口の中が中性に保っている時間が短くなり、虫歯になるリスクを高めます。
また、甘いものを多く食べていると、そのだけ歯が酸にさらされる時間が多くなるため、さらに虫歯になりやすくなります。

3-3.唾液の量が少ない

口呼吸や飲んでいる薬の副作用などで口が乾いている状態が続くと、虫歯になりやすいと言われています。
唾液には自浄作用と言って、口の中を潤すことで汚れを洗い流す働きをしています。そのため、唾液が少なく口が乾いた状態が続くと、口の中の汚れを洗い流すことが出来ず、虫歯のリスクを高める原因を作ってしまうのです。
また、就寝中は誰でも唾液の量が少なくなります。この間に細菌が活発に活動するため、就寝前にはしっかりと歯磨きをする必要があります。

4.虫歯の進行を遅らせる5つの方法

できてしまった虫歯でも、進行度合いによっては進行を遅らせることができる場合があります。

4-1.プラークを残さないようにする

虫歯の1番の原因はプラークが残っていることです。そのため、普段から丁寧な歯磨きをしてプラークを残さないようにすることで、虫歯の進行を遅らせることができます。
歯ブラシだけでは、歯と歯の間や隙間の汚れまでは十分に取り除くことができません。デンタルフロスや歯間ブラシを使って、プラークを取り残さないようにしましょう。
また、定期的に歯医者さんでクリーニングをしてもらうことで、自分ではどうしても取り除きにくいところまで徹底して掃除をしてもらえたり汚れをつきにくくしたりすることが可能になります。
歯石・歯垢のつきやすい箇所

4-2.間食をしない

決まった時間に食事をするような習慣をつけたり、間食の習慣をやめたりすることで、長い時間口の中を中性に保つことができます。
虫歯のリスクを下げることも、虫歯の進行を遅らせる方法の1つになります。

4-3.キシリトールを摂取する

キシリトールは近年使用されるようになった人工甘味料です。虫歯の元になるショ糖、ブドウ糖、果糖は含まれていないため、キシリトールで虫歯にはなりません。
また、キシリトールの働きによって再石灰化といって初期エナメル質う蝕(CO)が改善するとも言われています。
キシリトールを使用した食品はガムやタブレットなどが有名です。ただし、摂取方法があるので、注意してください。
(参考:JFSCP 日本フィンランドむし歯予防研究会)

4-4.フッ素を使う

フッ素(正しくはフッ化物)を歯に塗ると、歯の表面に作用して酸に強くなります。
その結果、虫歯になりにくくなります。また、初期エナメル質虫歯(CO)の再石灰化にも作用します。
最近は歯磨き粉に配合されていますが、昔から井戸水などに多く含まれていました。ただし、フッ素を使いすぎると歯が白く濁るようになります。歯医者さんに相談して、適切に使用するようにしましょう。

4-5.サホライドを塗る

虫歯の進行止めとして歯科医院でサホライドという薬品を使うことがあります。
しかし、サホライドを塗ると、塗った部分が黒く着色してしまいます。この着色は自然に落とすことが難しく、着色した部分を削り落とすしかありません。
そのため、一般的には大人に使うことはほとんどありません。暴れたりして治療が難しい子供や、通院困難な方の応急処置として使われることが多いです。

5.進行度別の治療方法

虫歯の治療方法は進行度合いによって、麻酔が必要であったり回数がかかったり、逆に経過観察のみの場合もあります。

5-1.初期エナメル質う蝕(CO)

以前は削って治していましたが、現在は多くの場合で再石灰化が期待されるため、経過観察とすることが多いです。丁寧に歯磨きをしたりキシリトールやフッ素を使ったりして再石灰化を促したり進行を遅らせたりします。

5-2.エナメル質う蝕(C1)

虫歯の部分を削り取って、白い材料(樹脂)を詰めて治療することが多いです。痛みが出ないもしくは少ないため、ほとんどの場合麻酔をしません。また、治療回数も1回で終わることがほとんどです。

5-3.象牙質う蝕(C2)

虫歯の部分を削り取って、白い材料(樹脂)もしくは金属を詰めます。痛みが出やすいため麻酔をして治療をします。また、虫歯の深さによっては神経に近い場合があり、1度神経を鎮静させる薬を使ってから詰め物をすることがあります。治療回数は2、3回かかることがほとんどです。

5-4.歯髄まで到達したう蝕(C3)

歯髄(歯の神経)まで虫歯が到達してしまうと、歯髄が細菌に感染してしまっているため歯髄を残すことができません。そのため、神経をとって、根の治療をする必要があります。また、歯髄が感染して炎症を起こすと激しい痛みが出ます。このときは、麻酔が効きにくいため、薬を使って歯髄の炎症が落ち着いてから本格的に治療を始めることになります。治療回数は、状況にもよりますがかなりかかることがほとんどです。
「痛かったけど、我慢していたら痛くなくなった」という人もいますが、それは治ったのではなく神経が死んでしまったために痛みを感じることができなくなっただけです。ここまで進行した虫歯は自然に治ることはありません。死んだ神経をそのままにしておくと膿が出てきてどんどん重症化します。

・抜髄については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|歯が痛くて耐えられない!神経を抜く抜髄治療のすべて

5-5.根だけ残った状態のう蝕(C4)

根だけ残っている場合、状態が良ければ根の治療をして差し歯にすることができます。しかし、根の深くまで虫歯が進んでいたり虫歯によって根がもろくなったり割れていたりした場合は抜歯するしかありません。

5-6.二次う蝕

詰め物や被せ物との間に虫歯が出来た時は、詰め物や被せ物を外して虫歯を取り、新しく作り直します。二次う蝕の場合、見た目の虫歯は小さくても中で大きく広がっていることがあります。レントゲンでもわかりにくい場合もあり、外してみて虫歯の大きさがわかることもあります。

5-7.根面う蝕

根の部分に虫歯が出来た場合、ほとんどの場合は白い詰め物(樹脂)で治療します。虫歯の範囲が広い場合は金属を詰めたり被せたりすることもあります。

まとめ

虫歯は進行度合いによって治療方法や回数が大きく変わっていきます。また、虫歯は普段の心がけや意識によってある程度予防することができます。
いつまでも自分の歯で食事できるようにするためにも、虫歯にならないよう気をつけましょう。歯磨きの仕方や予防方法について詳しく知りたい方は、ぜひ歯医者さんに相談してみてください。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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