2021.06.21

歯が割れた…抜歯は必要?歯根破折の原因と治療法

歯が割れた...抜歯は必要?歯根破折の原因と治療法

歯が欠けただけであれば、一日で治療が終了することもあるほど、対応もし易いのですが、歯が割れた場合はそうはいきません。
最悪の場合、歯を失うことになることもあり、できるだけ早期の治療が望まれます。
そこで、歯が割れる原因、歯が割れたときの治療法、そして以降に歯が割れる様なことにならない様に、予防法についてご説明します。

1.歯が割れるとはどういうこと?

歯根破折
歯が割れることを、歯の破折、もしくは歯牙破折(しがはせつ)といいます。実は、歯の破折は、歯を失う3大原因の1つにあげられています。
歯の破折は、破折した場所によって、更に歯冠破折と歯根破折にわけられます。
歯冠とは、歯の頭の部分のことで、簡単にいうと歯の見えている部分のことです。そして、歯根とは文字通り歯の根の部分のことで、目では見えない部分です。
このうち、歯冠破折については、破折した部分が小さいのなら、その部分だけコンポジットレジンというプラスチック製の詰め物をして、もしくは破折した部分が大きいなら差し歯タイプの被せものを入れたり することで治すことが出来ます。
しかし、歯根破折はそうではありません。歯茎の直下あたりの歯根の破折なら治せる余地もあるのですが、そうでない場合の歯根の破折は抜歯になってしまうことが多いです。

・コンポジットレジンについては、以下の記事で詳しく説明しています。
虫歯を削らずに保険で白く治療!コンポジットレジンとは

2.歯が割れる原因

2-1.こどもの時期

この時期に歯が割れる原因としては、転んだり、顔をぶつけたりすることが大半です。
破折の程度は、転倒の際に手をつくかつかないかで大きく異なってきます。

2-2.思春期から青年期

この時期も転倒によって歯を割ってしまうことが多いですが、子どもの時期とは異なり、歩行時の転倒よりも、自転車での事故の割合が多くなってきます。
また、スポーツにより歯を割ってしまう頻度も増えてきます。空手やボクシングなどの格闘技系は想像しやすいですが、野球のボールが直撃して歯が割れてしまうこともあります。
スポーツによる歯のケガを防ぐためにマウスピースをあらかじめ装着することも、最近増えてきています。

2-3.中年期以降

この時期になりますと、ケガによる破折の割合が減少してきます。

2-3-1.歯の神経をとる治療後の歯の破折

むし歯になると、むし歯の大きさによっては歯の神経をとる治療をすることがあります。
このとき、歯の神経と一緒に血管もとってしまうことになります。歯はこの血管を通して栄養や酸素を受け取っています。
歯の神経をとると、歯が死んでしまうといいますが、これは、血管を失うことにより、歯に栄養や酸素が届かなくなるからです。こうした歯は、結果的にもろくなります。しかも、神経をとらなければならないほどのむし歯ですから、歯も薄くなっています。もろくなったり、薄くなったりするため、歯が割れやすくなります。

2-3-2.差し歯による歯の破折

神経と取らざるを得ないほどのむし歯の歯を治すと、歯がほとんど残っていないため、差し歯をつける治療を行なって治します。
差し歯とは、歯の根に心棒を差し込んで、その上に被せものをつける治療です。歯が薄くなっている上に、心棒を差し込むため、歯が割れてしまうことがあります。

2-3-3.歯ぎしりや食いしばりによる歯の破折

歯ぎしりや食いしばりは、歯の根にとても大きな力を加えてしまいます。歯ぎしりの癖のある人は、数分から数十分ほど毎晩歯をすりあわせているといわれています。また、食いしばる時に歯には、時に自分自身の体重に匹敵するほどの大きな力がかかることもあるそうです。こうした過大な負荷が歯に加わることで、歯が割れてしまうことがあります。

2-3-4.ケガによる歯の破折

この時期でもケガにより歯を割ってしまうことがあります。交通事故や労働災害によるものが増えてきます。対して、スポーツによるものは減ってきます。
また、高齢になってくると、転倒による破折が増えてきます。

3.歯根破折の症状

では、歯根が破折したとき、どのような症状が現れるのでしょうか。
インプラント術後に痛みのある人のイメージ

3-1.歯茎の腫れや痛み

歯の割れた部分から、細菌が侵入し化膿を起こすことで、歯茎が腫れてきます。そのとき、痛みを伴う場合もあります。

3-2.咬み合わせたときの痛み

歯根が破折することで、その周囲に炎症が起こり、咬み合わせた時に痛みを感じたり、歯が浮いた感じがしたりすることがあります。

3-3.差し歯が外れる

差し歯の心棒の周囲の歯根が割れると、心棒と歯の間に隙間が出来ます。そこから、接着剤が溶け出したりすることで、差し歯が外れてしまうことがあります。

3-4.差し歯がぐらつく

差し歯が完全には外れず、ぐらぐらするだけに留まっていることもあります。これは、割れた歯根の一方に接着剤がしっかりと残っており、差し歯が外れてしまうことがないためです。しかし、歯は割れているので、割れた歯根が差し歯ごとぐらぐらと動いている状態を意味します。

3-5.破片がでてくる

歯根が割れて、小さな破片が歯茎から出てくることがあります。鋭いことが多いので、それにより舌や頬に傷を作ることがあります。

4.歯根破折の治療法

4-1.抜歯

破折した部分が、歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨の中にまで及んでいると抜歯になるのが大半です。抜歯した後は、残された歯の状態によって、ブリッジと呼ばれる両隣の歯に被せものを装着し、それを繋げて咬める様にする、被せものタイプの人工歯、もしくは入れ歯になります。
保険診療の適応はありませんが、インプラントという選択肢もあります。

・抜歯後の選択肢については、以下の記事で詳しく説明しています。
奥歯が抜けた!部分入れ歯?インプラント?ブリッジはできる?

4-2.根の再治療

破折した部分が、歯槽骨の上端よりも上で留まっている場合に行なわれます。破折片のみを除去した上で、歯の根の治療を行ない、改めて差し歯を作る治療法です。

4-3.亀裂の除去

亀裂のみで、しかもその亀裂が歯の内側に留まっており、外にまで現れていない場合は、亀裂の部分を削って取り除き、その部分を接着剤で補強して、根の治療を行ない、差し歯をつけて治します。

4-4.神経の治療

歯のケガなどで、神経がしっかり残っている歯が破折した場合、局所麻酔をして歯の神経を取り除く治療を行ないます。そのあと、差し歯を装着して治します。

・神経の治療については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|歯が痛くて耐えられない!神経を抜く抜髄治療のすべて

4-5.接着法(歯が破折したときの治療方法)

接着法とは、破折した部分を歯科用の接着剤を使ってくっつける方法です。従来は抜歯をしていた破折した歯を保存するために考案されました。

4-5-1.口腔外接着法

口腔外接着法
破折した歯を一度抜歯して、お口の外で接着剤を使ってつける方法です。
うまく抜歯出来なければ、歯がくだけてしまうことがあり、そうなればもう戻すことは出来なくなります。また、接着して戻せたとしても、その歯がきちんと骨と繋がるかどうかという問題があります。
しかし、接着力を最大限発揮出来る方法でもありますので、条件さえよければ、予後を期待出来ます。

4-5-2.口腔内接着法

破折した歯を抜歯せず、局所麻酔をした上で、歯茎を切開したのち破折した部分を明示出来れば、そこに直接接着剤を塗布する方法です。
抜歯することが無いので、抜歯する時に歯がくだけてしまったりするリスクや、抜歯した歯が戻した後に骨と繋がらずに抜けてしまうリスクはありません。
その一方、破折した面が歯と歯の間の面だったり、裏側だったり、もしくは歯槽骨で見えない部分であったりすると、接着剤を塗ることが出来ません。
また、接着力を十分発揮させるためには、歯を乾燥させることが大切ですが、この方法ですと血液がにじんできたりするのを十分抑えることが難しいので、接着力が低下してしまう可能性もあります。

4-6.挺出法

破折した部分が歯槽骨よりも下方にあるけれど、歯の根の長さの半分にも至っていない場合に、行なわれることがあります。
破折片を取り除いた後、残った歯根にフックをつけて、そのフックにゴムをかけて、歯根を引っ張り出す方法です。歯根が歯槽骨の上端付近までのびてきたら、根の治療を行ない、再び差し歯をつけて治します。破折が深いところにまで及んでいる場合や、引っ張り出している最中に歯が更に割れてしまった場合には、適応出来ません。

5.歯根破折をおこさないために

5-1.むし歯を放置しない

神経をとらないといけないほどにまで、むし歯を放置せず、初期の小さい段階で虫歯を治療しておきましょう。
むし歯は初期段階では痛みを感じないことも多く、なかなか気がつきません。気づいた時には大きくなっていることもありますので、定期的に歯科医院でチェックしてもらいましょう。

・むし歯については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|虫歯の進行度別の治療法と進行を遅らせる方法

5-2.歯ぎしりや食いしばりを防ぐ

歯ぎしりや食いしばりの癖のある場合は、マウスピースをつけて歯を守る様にしましょう。
マウスピースをつけると、歯ぎしりによる左右への歯を揺らす力や、食いしばりの際にかかる力をマウスピースが受けとめてくれます。これにより、歯に有害な力がかかってくるのを防ぎます。

・歯ぎしりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
歯ぎしりがもたらす体に悪い10のことと自宅での治し方

・食いしばりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
今日からできる!食いしばりを治す7つの方法

5-3.むし歯の再発を予防する

被せものの縁に磨き残しやプラークが付くことにより、そこから再びむし歯になることがあります。これを二次齲蝕、もしくは二次カリエスといいます。
日々の歯みがきを歯ブラシ以外に歯間ブラシや糸ようじを使って丁寧に行なうことと、取りきれない汚れを定期的に歯科医院で取り除いてもらう様にすることで、予防しましょう。

5-4.スポーツ用のマウスピースを使う

マウスピース

スポーツによる歯の破折を防ぐには、スポーツ用のマウスピースを使うのが有効です。
格闘技系はもちろんですが、そのほかのスポーツでも無意識のうちに食いしばっていることもあるので、マウスピースを使うことをお勧めします。マウスピースをつけたからといって、完全に歯根破折を予防することが出来るわけではありませんが、その発生確率を低下させることができます。また、外力がかかった時に、歯を保護する効果もあります。スポーツを行なう前につけておくことで、歯を外力から守りましょう。

まとめ

歯が割れた場合に、歯根が破折してしまっているか?歯の根の上部分までか?など、状態によって歯の保存を行う治療ができるかが変わります。
歯が割れてしまった時は、できるだけ早く歯科医院に相談に行きましょう。
また、歯を少しでも多く、そして長く残し、いつまでも自分の歯で食べることが出来る様、歯根破折から歯を守る様にしましょう。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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