2021.08.10

技術、設備だけじゃない!歯科医が考える良い歯医者の選び方

技術、設備だけじゃない!歯科医が考える良い歯医者の選び方
歯医者は、痛いイメージや抜歯のイメージなどを背負っているため、どうしてもいいイメージで見てもらいにくいのが実情です。
幼児などは正直なもので、歯科医院の玄関を入っただけで泣いてしまう子どももいます。そして、大人にとってもなかなか敷居の高い存在なのではないでしょうか。
今回は良い歯医者に行くときの選び方を、技術面だけではなく、治療方針や衛生面など、様々な視点から確認しやすいポイントをあげてみました。

1.良い歯医者とは

歯科医院イメージ

1-1.技術について

歯医者の技術を患者目線で確認することはとても難しいです。では、腕の良い歯医者とはどんな歯医者でしょうか。
歯型を何度もとらない歯医者でしょうか。被せものが外れない歯医者でしょうか。前者は、単にうまく歯型がとれなかったからではなく、もしかしたら職人目線で納得出来るまで繰り返しただけかもしれません。後者は、単に技術が足りず外れてしまうのでしょうか。もしかしたら、本当は抜かなければならない、保たなさそうな状態の歯を、なんとか残そうと無理をして治してくれているからかもしれません。
これらは一例に過ぎませんが、技術の評価が難しいことを理解していただけたでしょうか。

1-2.説明について

インフォームド・コンセントという言葉があります。これは、患者に病状と診断を説明した上で、治療方針を提示し、納得してもらい同意を頂く一連の行為をいいます。
ろくに説明もせずに、削り始めたり、抜歯をしたりするような歯科医師は論外です。きちんと説明してもらえることは基本です。治療前に十分説明してもらえるかを確認しましょう。
さらに、患者に聞こえのいい言葉ばかりを並べるのもどうかと思います。やはり患者のことを思い、直すべきところを的確に指摘してくれる歯医者の方がいいはずです。
優しさだけでなく厳しさを持った指導をしてくれるかどうかも、確認したほうがいいでしょう。
そして、あまりにも口がうますぎるのも注意しましょう。

1-3.治療方針

1-3-1.予防治療

予防の歯ブラシの仕方
むし歯や歯周病になれば、悪くなることはあっても自然と良くなることは稀です。
例えば、むし歯を削って人工材料で詰めて治したとして、その部分は異物が入っているわけです。歯と人工物の隙間というのは必ず存在します。隙間からむし歯が再発することは良くあります。すると、さらにまた削って詰めますので、本来の歯の部分がますます減ってしまいます。
つまり、歯はむし歯や歯周病になる前に予防できるなら、それが一番なのです。
しかし、現在の診療報酬体系は、むし歯や歯周病を治すほうがより点数が高くなる仕組みです。そんな現状で、むし歯や歯周病の治療より予防に重点を置いている歯科医院は、より患者目線で対応してくれていることの証です。確認しておいたほうがいいでしょう。

1-3-2.治療の選択肢

治療の選択肢が豊富にあるというのも、患者にとって大きな利点であると言えます。
特に、やたらに保険外診療を勧めずに、保険診療であっても、幾つかの選択肢を提示してくれる歯医者は、とても丁寧な対応をしてくれていると言ってもいいでしょう。

2.歯医者の選び方(建物や設備について)

歯科医院内のイメージ

2-1.診療所の外観や清潔感

病院や医院の外観がたとえ古くても、清潔感があるところがいいです。
待合室が散らかっていない、トイレが掃除出来ている、院長を含め全てのスタッフのユニフォームがきれいである、こういったことは、滅菌や消毒以前の問題ですし、簡単にわかります。清潔感も確認してみましょう。

2-2.滅菌や消毒

消毒する機材
患者目線では、これはなかなかわかりにくいのが実情です。器材が仰々しく袋に入っている状態で出されても、ほんとうにきちんと滅菌されているかはわかりません。
そこで、そこの歯科医院の滅菌や消毒に対する考え方を、わかりやすく評価できる点をいくつか紹介します。
ひとつは、手袋です。患者ごとに処置が終われば、きちんと手袋を交換しているかどうかをみるのは、比較的わかりやすいです。処置が終われば手袋を交換するのが、基本です。
また、ショッピングモールに併設されている歯科医院などで、スタッフが白衣を着たままで診療施設から出て買い物をしているとか、それだけでなく、手袋をつけたままだったりすると、もはやこれは論外です。
いくら滅菌や消毒をしっかりしていると広告していても、そのレベルをこうした点から伺い知ることが出来ます。

2-3.設備

設備に関しては、なかなか費用の点から新しくしづらいのが実情です。
特に歯科の治療用の椅子は、300万円は下りません。ですから古いものを使い続けている場合も多いです。
しかし、古いものが悪いというわけではありません。そこで確認すべき点は、器材のメンテナンスがきちんとできているかどうかです。
単純な器具ほど故障が少ないので長持ちします。しかし、古くなってきて錆が浮いていたり、縁が欠けたりしているようでは、メンテナンスがきちんと出来ているとは言えません。大きな器械のメンテナンス状況を把握するのは難しいですが、小さな器具の状況を確認すると、想像出来るかもしれません。

2-4.待合室

歯科医院待合室
日本の歯科医院は、たいていが予約診療制になっています。歯医者自身が、自らの技量をわきまえていれば、この処置はこれだけの時間がかかるから、次の予約時間はこれだけ確保しておこう、と計画が立てられます。そうすれば、さほど待合室は混まなくなるはずです。
確かに急患が入ることもありますが、待合室が混み合ってしまうほど急患が立て続けに入ることは稀です。
待ち患者が増えると、歯医者の側も心理的に焦らされて良くないです。
患者一人一人にきちんと時間を確保して、丁寧な治療をするためには、やはり計画的な診療が欠かせません。そうした意味でも、混みすぎている歯科医院というのは配慮として問題があるのかもしれません。待合室も確認してみてください。

2-5.看板

看板や広告に、「抜かない」「削らない」などと、耳当たりのいい言葉を並べているところもどうかと思います。
抜かなければならない状態の歯は、必ず存在しますし、そんな歯でも残しておくというのでしょうか。むし歯を削らず、どうやって治すのでしょうか。痛くない治療というのはどうやって行うのでしょうか。麻酔の注射の痛みは、痛みには入らないとでもいうのでしょうか。こういった美辞麗句を並べているところは、どうかと思います。

3.歯科医の考える良い歯医者の選び方とは

筆者は、歯医者が自分の現在の技量で出来ることと、出来ないことをちゃんと理解しているかどうかということに尽きると考えています。
医療を行なう上で大切なことは安全性の確保です。これは歯科治療でも同じです。特に歯科治療は、外科処置が基本となります。
抜歯が外科処置というとわかりやすいですが、実はむし歯を削るのも外科処置のひとつですし、歯周病の治療で歯石を取る行為も外科処置に含まれます。
一方、歯科で薬を中心にした内科的治療というのは、現在の歯科医療ではないことはないのですが、稀です。
例えば、舌痛症で内服薬を出して経過観察をするとか、口腔カンジダ症という口の中のカビを治すために抗真菌剤で治療するとか、口腔乾燥症で唾液分泌を促進する薬を長期間にわたり処方するとかですが、あまり耳にしないと思います。
このように歯科治療は、外科処置が中心となりますので、自分自身の技量をわきまえておかないと、事故の元となりかねません。
もちろん、医療は日進月歩です。日々、新しい治療方法が開発されていきますので、いつまでも古いことばかりをしていてはついて行くことが出来ません。
しかし、新しい技術も古い技術の上に成り立つものです。基礎たる古い技術がおぼつかなければ、新しい技術もありません。講習会を受講して受講票を壁にたくさん掲げるのもいいのですが、講習会を受けた所で、技術がすぐに身に付く筈もありません。
やはり、自分の限界を知り、無理のない治療を心がける歯科医師のほうが、安全であることは論をまたないです。

3-1.魚の食べ方をきれいに食べることが出来るかどうか

魚の食べ方
外科医が、手先が器用かどうかを見分けるポイントがあります。そのポイントとは、魚をきれいに食べることが出来るかどうかです。
これは、研修医の頃に指導医からよく言われました。魚をお箸できれいに食べるためには、手先の器用さはもちろんですが、骨と骨膜という骨の表面にある薄い膜、筋肉と筋膜という筋肉を覆っている薄い膜との関係を十分に理解しておく必要があります。
これが理解出来ていると魚をきれいに食べることが出来ます。これは人間の場合も同じです。
例えば歯ぐきに埋まった親知らずの抜歯をする時に、こうした解剖学的な関係を理解しておかなければ、歯ぐきの切開ひとつにしてもなかなか上手には出来ません。さらに言えば、利き手の逆の手で上手にお箸を使えれば、なおよろしです。

3-2.口腔外科であれば、親知らずを上手に抜歯出来るかどうか

口腔外科を志すものにとって、親知らずの抜歯は基本中の基本です。なぜなら、親知らずの抜歯術に、口腔外科で必要とされる外科処置の基本が全て含まれているからでもあります。
インプラントにせよ、外傷の治療にせよ、そこには親知らずの抜歯に際して必要とされる技術がすべて含まれています。親知らずを上手に抜歯出来るかどうかも、キーポイントといえるでしょう。

3-3.患者情報の照会と紹介

最近は、高齢者の方やなんらかの病気を持っている患者さんが増えています。
そんな中、問診票やお薬手帳の内容から、疑問があれば処置前に必ず内科や外科などの主治医に、病状の問合せを行なう歯科医は安心出来ます。
また、自院で難しいと思われたら、無理せずに病院歯科などを紹介してくれる歯科医も信頼出来ます。

3-4.入れ歯は補綴(ほてつ)を学んでいるかどうか

部分入れ歯
歯が欠けてしまったり失われた場合に、被せ物や詰め物、入れ歯やインプラントなどの人工物で補うこと補綴(ほてつ)と言います。
この補綴(ほてつ)による治療において、日本歯科補綴学会という団体が「補綴専門医」の認定制度を設けています。
日本全国で、歯科医師の人数は、約10万人以上いると言われていますが、その中でこの学会に認定を受けた補綴専門医は1,222人と歯科医全体の1%にすぎません。
入れ歯治療は、歯科のなかでも難しい分野の1つで、上手な歯科医師や補綴を学んで経験が豊富な医師は少なく、すべての歯科医師が、同じ品質の入れ歯治療の提供ができるという訳ではありません。
お悩みの方は、この辺りも確認すると良いかもしれません。

まとめ

日本のことわざには、ヤブ医者に関するものもあります。『藪医者の玄関』=藪医者ほど玄関は立派にして患者を信用させるという意味。
『藪医者の薬味箪笥』=腕の悪い医者ほど、立派な薬味箪笥を持ち、外見だけでも良くしようとしているという意味。
どちらも、下手な腕前を外見だけを立派にすることで、ごまかすということから生まれたことわざです。
こんなことわざが出来るくらいですから、どうやら、良い医者をどのようにして見分けるかは、昔から多くの人を悩ませてきたようです。
歯科医院は、コンビニより多いといわれる昨今ですが、やはり選択肢は多すぎても人々を悩ましてしまいます。
なかなか足を運びづらい歯医者ですが、受診するなら出来るだけ良い歯医者を選びたいのが心情です。
そこで、簡単に確認出来る歯医者の選び方のポイントをいくつかあげてみました。
歯科医院選びの際に、ぜひ活用してみてください。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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