2021.10.01

歯が浮くような感覚の原因と痛いときの治療方法

歯が浮くような感覚の原因と痛いときの治療方法

『歯が浮く様な』という慣用句がありますが、文字通り実際に『歯が浮く様な』感覚を受けるときがあります。このように歯が浮いた感じがしたとき、歯にはどのようなことが起こっているのでしょうか。
歯が浮いた感じがするときに考えられる原因や、治療法についてご説明します。

1.歯の構造について

歯が浮いた感じがするとき、その原因は歯の中ではなく、外の部分にあることが大半です。しかし、そこに至る道筋は、歯そのものにあります。ですからまずは、歯の構造を理解しておく必要があります。

歯の構造と名称

1-1.歯冠と歯根

歯ぐきから見えている部分を歯冠(しかん)、見えていない部分を歯根(しこん)といいます。
歯冠も歯根も等しく、その構造の大部分は象牙質によって構成されています。なお、歯冠の表面はエナメル質という、骨よりも硬い、身体の中では最も硬いとされる無機質で覆われていますが、歯根にはそのようなものはありません。そして、歯冠と歯根の中間付近を、歯頚部(しけいぶ)といいます。

1-2.歯髄

歯髄(しずい)とは、いわゆる歯の神経のことです。歯の神経といいますが、実際には神経だけでなく、動脈や静脈、つまり血管も走行しています。歯は、この血管を通して栄養や酸素を受け取っています。
歯髄が収まっている象牙質内部の構造を、歯髄腔(しずいくう)といいます。そして、歯髄腔の歯根側を根管と言います。
歯髄は、歯冠の中央付近から歯根の先端にまで存在しています。そして、歯根の先端から出ていきます。歯根の先端を根尖(こんせん)といい、そこにある歯髄の出口を根管口(こんかんこう)とよびます。

2.歯周組織の構造について

歯の外の部分、すなわち歯周組織の構造も理解しておかなければなりません。歯周組織とは、歯を支えている部分のことをいいます。歯周組織には、歯肉(しにく)・歯槽骨(しそうこつ)・歯根膜(しこんまく)・セメント質があります。
このうち、歯が浮いた感じがする時に関連してくるのが、歯槽骨と歯根膜です。

2-1.歯槽骨

歯槽骨とは、歯を支えている骨のことです。実は顎の骨と歯槽骨は別物です。レントゲン写真をとっても、両者に明確な境界線はありませんからわかりにくいのですが、歯を抜きますと、歯槽骨の部分だけ吸収されて減ってきます。これは、歯が無くなったことにより支える骨が必要なくなった結果です。
なお、歯槽骨の”槽”とは、”おけ”という意味です。浴槽という言葉にも使われていますね。つまり、”歯を納めておくためのおけ”というのが歯槽という言葉の意味で、その骨ということです。

2-2.歯根膜

歯根膜とは、歯と歯槽骨を繋げている靭帯の様な薄い組織のことです。なお、歯根膜は歯根と直接くっついているのではなく、歯根の表面のセメント質を介して歯根と繋がっています。
歯根膜には、感覚神経の終末が届いています。この神経には、圧力を感じる働きがあり、食べ物を噛む時に、歯にかかってくる噛む力を調整する作用があります。前歯でフォークやスプーンを知らない間にガリッと噛んだら、無意識に口を開けていた経験ありませんか?これは、歯根膜が過剰な圧力を検知した結果です。
なお、どれだけの力なら大丈夫かは、歯によってそれぞれ異なり、前歯の方がより敏感になっています。

3.歯が浮くような感じがするときに考えられる原因

歯が浮いたような感じがするとき、幾つか考えられる病気があります。

3-1.根尖病巣

歯根の先に、膿が貯まってくることがあります。これを根尖病巣といいます。根尖病巣ができると、病巣が拡大する過程で、内部の圧力が高まってきます。すると、歯を押し上げる方向に作用する力が発生します。そのために、歯が浮いたような感じがするようになります。

3-2.歯根嚢胞

歯根嚢胞
歯根嚢胞とは、根尖の先にできた膿のかたまりなのですが、根尖病巣と異なり、袋状の膜に包まれたものとなっております。いわば、根尖の先の歯槽骨の中にできたおできのようなものと思ってもらえればいいでしょう。
歯根嚢胞自体は、長い年月をかけてゆっくりと大きくなってくるものでして、痛みを感じることはまずありません。しかし、何らかの原因で体調が悪化するなどした場合に、免疫力が低下することで、急激に痛くなったりすることがあります。その時は、たいていの場合、歯根嚢胞内部で圧力が高まってきます。それにより歯を押し上げようとする力が働きます。そのために、歯が浮いた感じをするようになります。

・歯根嚢胞については、以下の記事で詳しく説明しています。
腫れて痛い!歯根嚢胞の原因と再発時の対処方法

3-3.食いしばりや歯ぎしり

食いしばりや歯ぎしりをする癖があると、歯に負荷がかかっている時間が長くなります。
普段はあまり意識しませんが、実は上下の歯は、何もしていない時間は当たっていないものなのです。これを安静時空隙(あんせいじくうげき)といいます。言い方を変えると、食べているとき以外、歯は当たっていないわけですから、1日のうちのほとんどの時間、上下の歯は当たっていないことになります。
ところが、食いしばりや歯ぎしりの癖があると、癖の起こっている時間帯は上下の歯が当たり続ける様になります。すると、歯根膜に負荷がかかり続けます。それによって歯根膜が炎症を起こしますと、歯根膜が腫れた様な感じになります。すると、歯根膜の厚み分だけ、歯を押し上げる方向に力がかかります。こうして、食いしばりや歯ぎしりによって、歯が浮いた様な感じが起こってくるのです。
ちなみに、食いしばりというと、重量挙げ等のスポーツ選手が思いっきりかみしめている様な状態をイメージしがちですが、下の歯で上の歯を触る様な軽い接触でも、同じ効果が生まれます。ですから、このような軽い癖も、歯にとっては有害な働きをもっていることをご理解下さい。

4.根尖病巣や歯根嚢胞ができる原因は?

根尖病巣や歯根嚢胞はどうしてできるのでしょうか?実は、この両者には共通する点があります。それは、それらが生じた歯が失活歯(しっかつし)であるということです。
失活歯とは、歯髄を取り除いた後の歯のことです。むし歯の治療では、むし歯が歯髄のあたりにまで進行した場合、歯髄を取り除く治療を行います。なぜなら、歯髄にまでむし歯が進行した場合、痛みが非常に激しくなったり、痛みがなくても歯髄が腐ってくることがあるからです。

歯髄には、歯の神経だけでなく血管も走行していることは、前述しました。身体が異物や細菌などの微生物の進入に対して、防御を行う能力を免疫力と言います。この免疫力を担う細胞群は、血管を通して運ばれます。血管がないところは、免疫作用も働くことはできません。
歯髄を取り除く治療をすることによって、歯の内部には血管がなくなってしまいます。根管内部は、免疫系の細胞が届かなくなるため、免疫力が作用できない部分になってしまいます。これのより、歯の内部は細菌感染にとても脆弱な場所になってしまいます。

そこで、細菌感染を防ぐために、根管治療を行います。根管を十分消毒し、その上で細菌が繁殖する隙間がなくなるように、空洞の根管を専用の充填材を使って緊密に埋めるのです。
しかし、もし根管内で細菌が繁殖しようになると、根管以上の繁殖場所を求めて、根尖から出て行こうとします。その結果、根尖の先に膿がたまってくるようになるのです。これが根尖病巣です。その膿がたまって何年も経つと、その周囲が上皮化してきます。こうして袋状の膜ができます。こうして歯根嚢胞が生まれると考えられています。

5.歯が浮くような時の治療法は?

5-1.根尖病巣

根幹治療
感染根管治療という治療を行います。感染根管治療とは、細菌に感染した根管を治療するという意味です。つまり壊死した歯髄、もしくは以前の根管治療の後に詰められた充填材を取り除いて、根管を消毒する治療法です。根管内を消毒することで、細菌を絶ち、根尖病巣を治します。根尖病巣が治れば、歯が浮いたような感じがすることも無くなります。

5-2.歯根嚢胞

歯根嚢胞の治療も、まずは感染根管治療から始まります。しかし、根尖病巣とは異なり、袋状の膜が出来ていますので、根管治療だけでは治りません。
嚢胞は、外科的に取り除かなければなりません。そこで、歯根嚢胞の摘出術を行い、同時に歯根の根尖部の一部を切除する、歯根端切除術も行います。

5-3.食いしばりや歯ぎしり

食いしばりや歯ぎしりに対しては、マウスピースを作って治療を行います。
食いしばりや歯ぎしりによって歯にかかってくる力をマウスピースが受け止めてくれます。それによって、歯根膜にかかる負荷を軽くして炎症を抑え、歯が浮いたような感じがするのを防ぎます。

6.歯が浮くような感じがしないようにするには

6-1.根尖病巣や歯根嚢胞の予防法

虫歯予防グッズ
歯髄腔を取り除かなければならなくなる状態にまで、むし歯を放置しないことです。そのためには、まずは日々の歯磨きを丁寧に行います。具体的には歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯と歯の間まで丁寧に磨きます。
そして、定期的に歯科医院を受診します。歯科医院で磨き残しをきれいにしてもらうだけでなく、むし歯をなるべく早い段階で発見してもらい、歯髄の除去に至らないように早期治療をしてもらうことです。

・食いしばりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
確実な歯の神経と根の治療!歯の寿命が長持ちする根管治療

6-2.食いしばりや歯ぎしり対策として

食いしばりや歯ぎしりの原因の一つに、ストレスがあります。ストレスを感じると、自然と食いしばりや歯ぎしりを行うようになります。ストレスを発散する方法を身につけ、ストレスが溜まらないようにしましょう。他、スポーツをするときも食いしばりが生じることがあります。あらかじめ、マウスピースを作っておき、運動する際には、事前に装着しておくこともいいでしょう。

・食いしばりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
今日からできる!食いしばりを治す7つの方法

・歯ぎしりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
歯ぎしりがもたらす体に悪い10のことと自宅での治し方

まとめ

歯が浮くような感じがした時、それは根尖病巣や歯根嚢胞、食いしばりや歯ぎしりが原因かもしれません。
根尖病巣や歯根嚢胞が原因なら、感染根管治療を行います。そして歯根嚢胞の場合は、嚢胞の摘出手術を行います。食いしばりや歯ぎしりが原因なら、マウスピースを作って、歯にかかる負荷から歯を守るようにします。
しかし、可能であれば、そのような状態になるまでに予防したいものです。そのためには、日々の歯磨きを丁寧に行い、定期的に歯科医院で診てもらいましょう。そうすることで、むし歯の進行を予防し、歯髄を守ることができれば、根尖病巣や歯根嚢胞を予防することができます。
また、食いしばりや歯ぎしりは、ストレスによって起こることが多いので、ストレスを発散する方法を身につけ、食いしばりや歯ぎしりを防ぎましょう。
運動による食いしばりもありますので、事前にマウスピースを作っておき、適時使用することもよい予防手段です。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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