2025.05.23

入れ歯の調整頻度は?長く快適に使うための歯科医師のアドバイス

入れ歯の調整頻度は?長く快適に使うための歯科医師のアドバイス

入れ歯を使っていると、「痛い」「ずれる」「外れそう」など、ちょっとした違和感に悩まれる方は少なくありません。こうした問題は、入れ歯そのものに問題があるのではなく、“調整のタイミング”を逃していることが原因かもしれません。
本記事では、入れ歯の調整頻度や注意すべきサイン、日々のケア方法まで、歯科医師の立場から詳しく解説します。入れ歯を快適に使い続けるための知識と対策を、ぜひご確認ください。

1. 入れ歯の調整はなぜ必要?

1. 入れ歯の調整はなぜ必要?

入れ歯は一度作れば終わりではない

入れ歯は「一度作れば一生使えるもの」と思われがちですが、実際には定期的な調整が必要不可欠です。その理由のひとつが、あごの骨や歯ぐきが少しずつ変化するという人間の身体の特性にあります。
とくに入れ歯を支える歯ぐきの部分(歯槽堤)は、加齢や噛む力による圧力によって徐々に痩せていきます。入れ歯はあごの形に合わせて作られているため、土台が変化すると、当然その入れ歯は少しずつ合わなくなっていきます。
これは自然な現象であり、どんなに精密な入れ歯でも避けられないことなのです。

調整を怠ると起きるトラブルとは

入れ歯があごに合わなくなってきても、「まあ、使えているから大丈夫」と放置してしまう方は少なくありません。
しかし、これにはリスクがあります。たとえば、合わない入れ歯を無理に使い続けると、歯ぐきに強い圧力がかかり、傷や口内炎ができやすくなります。
また、噛み合わせがズレることで、肩こりや頭痛、顎関節の痛みにつながることもあります。入れ歯がずれる、外れやすくなる、食事がしづらいなどの不調があれば、それは「身体からのサイン」と言えます。入れ歯の調整は、単に快適に過ごすためだけでなく、全身の健康を守るためにも重要なのです。

多くの方が感じている違和感の正体

「なんとなくしっくりこない」「食べ物が噛みにくい」「話すときに入れ歯が動く」
――こうした違和感を訴える方は非常に多くいらっしゃいます。その原因の多くは、微妙なズレや歯ぐきの変化に、入れ歯が対応できていないことにあります。
入れ歯はミリ単位での調整が必要な精密な装置です。ほんのわずかな傾きや浮き上がりでも、違和感や痛みにつながることがあります。
とくに総入れ歯の場合、粘膜の吸着力や咬み合わせのバランスが崩れることで、不快感が強く出やすくなります。
違和感を我慢していると、次第に入れ歯を外したくなる、話すのが億劫になる、外出を控えるといった心理的な影響にまで及ぶことがあります。これを防ぐためには、歯科医院での定期的な点検と調整が欠かせません。

2.入れ歯の調整頻度の目安とは

初めての入れ歯使用者の場合

初めて入れ歯を使い始めた方は、初期にこそ頻繁な調整が必要になります。
新しい入れ歯はお口の粘膜や筋肉になじんでおらず、痛みや違和感が出やすいためです。
一般的には、装着から最初の1〜2週間で1〜2回の調整が必要とされ、その後も1〜2か月の間に状態を確認しながら数回の微調整を行うのが理想です。
歯ぐきがまだ入れ歯に慣れていないこの時期に適切な調整を行うことで、長期的に安定した使用感につながります。

使用歴が長い場合の調整タイミング

長年入れ歯を使用されている方でも、「調整なんてしたことがない」という方は意外に多く見受けられます。しかし、入れ歯は“静かにズレていく”もの。
あごの骨や粘膜は年単位で少しずつ変化し、それに合わせて入れ歯もわずかに合わなくなっていきます。
目安としては、半年から1年に一度は歯科医院での点検・調整を受けることが推奨されます。
痛みがなくても、知らないうちに噛み合わせがズレ、全身のバランスや消化に悪影響を及ぼすこともあるため、定期的な見直しは欠かせません。

入れ歯の種類による違い(総入れ歯/部分入れ歯など)

入れ歯の種類によって、調整の必要性や頻度には違いがあります。
総入れ歯の場合、すべての歯を人工的に支えているため、あごの骨の変化により密着度が低下しやすい傾向があります。そのため、調整頻度も高くなる傾向にあります。
一方、部分入れ歯の場合は、残っている歯に金具をかけて支えるため、支える歯の状態にも注意が必要です。
支台歯(入れ歯を支える歯)がぐらついてきた場合などは、早急な調整や作り替えが必要になることもあります。
どちらのタイプでも共通して言えるのは、「見た目ではわからないズレ」が、トラブルの原因になるということです。

痛みや外れやすさを感じたら要注意

「噛んだときに痛い」「外れやすくなった」「食べ物が挟まりやすい」といったわずかな不調でも、実は入れ歯の調整時期のサインであることが多いです。
特に50〜70代の方は、身体の変化に合わせて口腔環境も日々変化しているため、我慢せず、早めに歯科を受診することが大切です。
放置することで症状が悪化し、最終的に入れ歯の作り直しが必要になるケースもあります。違和感は「慣れ」ではなく「ズレ」や「変化」である可能性を常に意識しましょう。

3. 入れ歯調整の実際の流れと時間

3. 入れ歯調整の実際の流れと時間

調整の所要時間と来院回数の目安

入れ歯の調整にかかる時間は、1回あたり15分〜30分程度が一般的です。
痛みのある箇所を削ったり、咬み合わせを微調整したりといった処置が中心となります。
症状が軽い場合は1回の調整で改善されるケースもありますが、違和感が強い場合や複数箇所にわたる場合は、2~3回の来院が必要になることもあります。
特に、入れ歯を作ったばかりの初期段階では、使用に慣れる過程で細かな不具合が出るため、1週間ごとに複数回の調整が必要になることがあります。

調整時に行う処置とは?

調整では、主に「あたり」の確認と咬み合わせの修正が行われます。
「あたり」とは、入れ歯の一部が歯ぐきに強く当たりすぎている部分のことを指します。
これを放置すると、歯ぐきに傷ができたり、痛みが出たりする原因になります。
歯科医院では、専用の色のついた紙やペーストを使って問題の箇所を視覚的に確認し、ほんのわずかだけ削って調整します。
また、上下の咬み合わせがずれていると、片方のあごばかりに負担がかかるため、全体のバランスを見ながら噛み合わせの修正も行います。入れ歯を削る=壊すということではなく、快適に使い続けるための調整であるとご理解ください。

通院頻度が少ない方へのアドバイス

中には「忙しくて歯医者に通う時間がとれない」「遠方で通院が難しい」という方もいらっしゃいます。そのような場合でも、違和感や痛みを我慢しながら入れ歯を使い続けることは避けるべきです。
我慢して使い続けることで、傷が慢性化し、粘膜が硬くなってさらに合わなくなる悪循環が生まれてしまいます。できる限り半年に一度は歯科医院で点検を受ける習慣をつけましょう。
また、遠方から通院される方には、初回の調整時に複数回分をまとめて予約できるケースもありますので、事前に相談すると安心です。
最近では、義歯専門の歯科医院も増えており、調整を得意とする歯科医師に診てもらうことで、的確なケアが可能になります。

4. 入れ歯を快適に保つための日々のケアと工夫

正しい入れ歯の取り扱いと保管方法

入れ歯は毎日の使用とともに少しずつ摩耗や変形が進みますが、丁寧な取り扱いと保管を心がけることで、使用感の低下を防ぐことができます。
まず、取り外すときは無理に引っ張らず、両手でゆっくりと外しましょう。力任せに扱うと、金具が歪んだり、割れてしまったりするおそれがあります。保管の際は、乾燥による変形を防ぐために水に浸して保管するのが基本です。
ただし、熱いお湯は素材を変形させてしまうため、常温の水を使うことが重要です。
うっかり落として破損するケースも多いため、洗浄や取り外しは洗面器の上やタオルの上で行うと安心です。

入れ歯専用の清掃方法と注意点

入れ歯は食事のたびに汚れがつきやすいため、毎日の洗浄が欠かせません。
特に気をつけたいのは、歯磨き粉を使わないこと。多くの歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯の表面を傷つける原因になります。代わりに、入れ歯専用のブラシと洗浄剤を使うのが最も安全です。ブラシは毛先がやわらかく、細かい部分に入りやすい設計になっています。洗浄剤に一晩つけておくことで、目に見えない汚れや臭い、細菌の繁殖を防ぐ効果も期待できます。
また、金具付きの部分入れ歯の場合は、金属部分がサビないよう水分のふき取りにも気を配りましょう。

お口全体の健康を保つための習慣

入れ歯のケアと同じくらい大切なのが、ご自身の歯ぐきやお口全体の健康を保つことです。
毎日のうがいに加え、やわらかめの歯ブラシで歯ぐきをやさしくマッサージするようにブラッシングすると、血行がよくなり、粘膜の状態も安定します。
また、入れ歯をつけていると感覚が鈍くなりがちですが、舌や頬の動きを意識して話す・噛む習慣を保つことが、口の機能を維持するうえで非常に重要です。さらに、栄養バランスの良い食事や十分な水分摂取も、お口の乾燥や免疫力低下を防ぐために欠かせません。年齢とともに唾液の分泌が減る傾向にありますが、口をしっかり動かすことが唾液腺を刺激し、口腔内を潤す助けになります。

5.こんな症状は調整のサインかも

噛むと痛い・ズレる・外れやすい

入れ歯を使っていて「噛むときに痛い」「ずれてうまく噛めない」「話していると外れそうになる」といった症状は、調整が必要なサインです。
特に、食事中に痛みがある場合は、入れ歯の一部が歯ぐきに強く当たって炎症を起こしていることが多く、そのまま使い続けると口内炎や傷が悪化する可能性があります。
また、外れやすさは吸着力の低下や咬み合わせのズレによって起こるため、放置しているとさらに不安定になり、入れ歯が口の中で動くことで発音障害や誤嚥のリスクにつながるおそれもあります。

話しづらくなった・口内炎ができた

入れ歯を装着してしばらくすると、滑舌が悪くなったり、話しにくさを感じるようになる方がいます。
これは、入れ歯が舌や頬の動きの邪魔になっている状態である可能性が高いです。
もともと問題がなかったのに、急に発音しにくくなったという場合は、経時的なあごの変化に入れ歯が対応しきれていないことが原因と考えられます。
また、同じ場所に繰り返し口内炎ができる場合も、調整の必要性が高い状態です。入れ歯の縁や裏側が微妙に擦れて傷ついていることが多く、削る・丸めるなどの処置で大きく改善することがあります。

食べ物が挟まりやすくなった

「最近、入れ歯と歯ぐきの間に食べ物がよく挟まるようになった」と感じたら、それは入れ歯が少し浮いてきているサインです。
ぴったり合っている入れ歯であれば、ものが挟まることは少ないはずですので、隙間ができ始めている証拠とも言えます。
特に、葉物野菜や肉の繊維などが入りやすくなったときは、土台(歯ぐき)の形と入れ歯の内面が合っていない可能性が高いです。これを放置すると、噛む力が分散せず、一部の歯ぐきに負担が集中して、痛みや歯ぐきの痩せを進行させる原因になります。
食べ物が挟まるようになったと感じたら、早めの調整が快適な使用を保つカギとなります。

6. よくある質問

6. よくある質問

どのくらいの頻度で歯医者に行くべき?

入れ歯を長く快適に使い続けるためには、半年に一度の定期検診が理想的です。
自覚症状がなくても、見えない部分で咬み合わせのズレや歯ぐきの変化が進んでいることは少なくありません。
特に、総入れ歯を使っている方はあごの骨が年単位で徐々に痩せていくため、定期的な微調整が必要です。
部分入れ歯の場合も、支えている歯に負担がかかっていることがあるため、むし歯や歯周病のチェックを兼ねての来院が勧められます。
痛みがないからといって放置せず、トラブルが起きる前に調整することが、快適な生活につながります。

調整は無料?有料?保険は使える?

入れ歯の調整は、保険診療を行っている歯科医院では、保険診療の対象となる場合が多いため、自己負担を抑えながら受けることが可能です。
たとえば、「あたり」や「咬み合わせ」の調整、入れ歯の裏側に樹脂を足す裏打ち(リベース)処置などは、保険適用の範囲内で行えることがほとんどです。
ただし、自費で製作した入れ歯の場合は、調整も自費扱いとなるケースが多く、金額や対応内容は医院によって異なります。事前に料金体系を確認しておくと安心です。
また、保証期間内であれば調整が無料になることもあるため、最初に受けた説明書類を見直してみるのもよいでしょう。

入れ歯が合わないとき、作り直すべき?

入れ歯は何度も調整を重ねて使い続けることができますが、限界が来ることもあります。
たとえば、あごの形が大きく変わってしまった、入れ歯が割れたり変形している、調整しても外れやすさが改善しないといったケースでは、作り直しを検討する必要があります。
また、部分入れ歯の場合、支えている歯の本数が減った場合には設計そのものを見直す必要があるため、新しい入れ歯が必要になることも。
作り直すかどうかの判断は、現在の入れ歯の状態と、お口の変化を総合的に見て判断されるものです。不安な場合は、義歯治療を専門としている歯科医院で相談することをおすすめします。

7.まとめ

入れ歯は「作って終わり」ではなく、「育てていく道具」です。ほんの少しの違和感や不具合が、大きな不快感や健康リスクにつながることもあります。定期的な調整と、正しい日常ケアを組み合わせることで、入れ歯は驚くほど快適に長く使えます。
もし「合っていないかも」と感じたら、我慢せず早めにご相談ください。
当院では、丁寧な調整とお一人おひとりに合わせたアドバイスを通じて、快適な毎日をサポートしています。

【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

【監修・執筆】ハイライフ編集部監修
所属:ハイライフグループ
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