入れ歯が割れたり外れたりしたとき、「すぐ直せるの?」「費用はいくら?」と不安になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、入れ歯修理の費用相場や修理にかかる時間、信頼できる歯科医院の選び方まで、補綴専門医がわかりやすく解説します。
修理か作り直しかで悩んでいる方も、この記事を読むことでご自身の状況に合わせて、どのような対応がよいか考える参考になれば幸いです。
1.入れ歯が壊れたとき、まずどうすればいい?
入れ歯が突然壊れたとき、「すぐに歯科医院へ行くべきか」「費用はいくらかかるのか」「応急処置は可能か」といった疑問を持つ方は多いと思います。
ここでは、壊れた入れ歯の状態別に、正しい対処法と注意点を解説します。
よくある入れ歯のトラブルとは?|割れ・欠け・ゆるみ
入れ歯の破損でよくある症状は?
以下のような症状が多くの方に見られます。
・入れ歯本体にヒビが入る・割れる
・人工歯の一部が欠ける・外れる
・バネ(クラスプ)が折れる・変形する
・入れ歯が外れやすくなった(ゆるみ)
これらは入れ歯の経年劣化、落下、噛む力の偏りなどによって起こります。
特に、上下の噛み合わせが合っていない入れ歯では、破損リスクが高くなります。
入れ歯のトラブルは放置すると歯ぐきの痛みや炎症、顎のゆがみにつながるため、早めの対応が必要です。
入れ歯は自分で直せる?|応急処置とNG行為
Q:瞬間接着剤でくっつけても大丈夫?
A:絶対に使用しないでください。
市販の接着剤や瞬間接着剤は、
人体に有害な成分を含むことがあり、口の中での使用は大変危険です。
また、正しく噛み合っていない状態で固定すると、修理が不可能になる場合もあります。
Q:市販の入れ歯修理キットは使える?
一見便利そうに見えるものの、正確な位置合わせや噛み合わせの調整ができず、結果的に痛みや咀嚼障害の原因となることが少なくありません。
あくまで一時しのぎとしても推奨されません。
応急処置を考える前に、外れた・割れた時点で入れ歯の使用を控え、すぐに歯科医院に相談することが最善です。
修理が必要かどうかの見分け方は?
Q:見た目に異常がなくても修理は必要?
A:痛み・違和感・外れやすさがあれば要注意です。
入れ歯は見た目では判断できない異常が多くあります。
以下の症状がある場合は、早めに歯科医院で診断を受けましょう。
・以前よりも噛みにくい・外れやすい
・話しづらくなった
・口内に違和感・痛みがある
・入れ歯の裏側(床)に細かいヒビや摩耗がある
特に、入れ歯の合いが悪くなると噛む力が不均一になり、さらに破損しやすくなる悪循環に陥ります。
放置すれば、粘膜の傷や顎関節の痛みを引き起こすこともあります。
2.入れ歯修理にかかる費用はいくら?
入れ歯が壊れたとき、気になるのは「修理にはどれくらいの費用がかかるのか」という点です。
ここでは、保険診療と自費診療それぞれの価格の目安を、具体的に解説します。
入れ歯の修理は保険と自費でいくら違う?価格の目安
Q:保険と自費の入れ歯修理費用は、どのくらい差がある?
入れ歯の修理は、多くのケースで保険診療の対象になります。
費用を抑えたい場合には、保険適用での修理が基本となりますが、自費で対応する医院やケースも存在します。
保険では数千円、自費では数万円程度が一般的な相場です。
ただし、修理の範囲・材料によって金額は大きく変動します。
初診料や再診料も含めると、総額での負担額にも違いが出るため、事前に確認が必要です。
保険診療での修理費用はいくらかかる?
Q:保険で入れ歯を直すと、どれくらいの費用になる?
保険診療での入れ歯修理費用は、以下のようなケースが想定されます。
・小さなひび割れや欠けの修理:およそ1,000〜3,000円(3割負担の場合)
・人工歯の脱落・再接着:2,000〜4,000円程度
・バネの調整や簡単な補修:1,000円前後で済むこともあります
ただし、初診の場合は別途「初診料(約850〜900円)」がかかります。
また、再診の場合でも技術料・材料料などの加算があります。
保険診療で修理ができるのは、原則として既存の入れ歯が再使用可能な状態であることが前提です。
破損が大きすぎる場合は、修理ではなく再製作が必要になる可能性もあります。
自費診療の場合、どれくらいの費用がかかる?特徴と注意点
Q:自費で入れ歯を修理すると、費用はどれくらい高くなる?
自費診療では、保険のルールに縛られず、より自由な素材・方法での修理が可能です。
その分、価格帯は幅が広く、以下のようなケースが想定されます。
・軽微な修理(ひび・人工歯1本の交換):5,000〜15,000円
・床の割れなど構造的な修復:15,000〜50,000円以上
・素材を強化して再加工する場合:3〜5万円を超えることもある
自費の場合の特徴として、高精度の修理・短納期対応・院内技工士による即日対応などが挙げられます。
審美性や耐久性に配慮した材料を使用することも多く、「今後また壊れにくくする」ための調整や再設計が加わる場合もあります。
ただし、料金設定は医院ごとに異なるため、事前の説明を受けたうえで納得して依頼することが大切です。
見積もりを出してもらい、修理か再製作かを比較するのも一つの判断材料になります。
3.入れ歯の修理にはどれくらい時間がかかる?
「入れ歯の修理は何日かかるのか」「その日のうちに使えるのか」など、
修理期間に関する疑問は非常に多く寄せられます。ここでは、ケース別の所要時間の目安や、院内に技工士がいる場合の違いについても詳しく解説します。
その日に修理できることはある?即日対応のケース
Q:入れ歯が壊れたら、当日中に直してもらえる?
軽度な破損や調整であれば、即日対応が可能な場合があります。
たとえば人工歯が1本外れた、バネが少しゆるんだといったケースは、30分〜2時間程度で修理できることもあります。
ただし、医院の混雑状況や、技工士が常駐しているかどうかによって対応可否は異なります。
事前に電話などで「即日修理が可能かどうか」を確認してから来院するとスムーズです。
技工所に出す場合は何日かかる?修理完了までの流れ
Q:修理がその場でできない場合、日数はどれくらい?
歯科医院の多くは、入れ歯の修理を外部の歯科技工所に依頼します。
この場合、修理期間は通常2〜5日程度が目安です。
工程としては、医院で破損状況を確認 → 技工所へ発送 → 修理 → 医院へ返送 → 最終調整、という流れです。
複雑な修理や精密な再加工が必要な場合は、さらに1週間以上かかることもあります。
一方で、患者が入れ歯を使えない期間が生じるため、事前に食事の工夫や代替策の案内がある医院は安心です。
修理中は入れ歯なしでも大丈夫?一時的な対応について
Q:修理に出している間、入れ歯が使えないのが不安です…
入れ歯が1つしかない場合、修理期間中は装着できず、食事や会話が不便になることがあります。
医院によっては、仮の入れ歯を用意してくれる場合もあるので、
「修理中の対応があるかどうか」を事前に確認することが重要です。
特に食事がとりづらい・人と話す機会が多い方にとって、修理中の対応策は安心材料になります。
院内に技工士がいる歯科医院なら即日修理できる?メリットとは
Q:院内に技工士がいると、何が違うの?
歯科医院によっては、院内に歯科技工士が常駐しているところもあります。
このような医院では、歯科医師と技工士が連携しながら、破損状況を見てその場で修理対応が可能です。
特に、ちょっとした割れや欠け、バネの補修などは即日対応しやすいという大きな利点があります。
また、仕上がりの確認もその場で行えるため、再調整の手間や時間が減るというメリットもあります。
「入れ歯を預けたくない」「なるべくその日のうちに戻してほしい」という方は、
院内技工室のある医院を選ぶと時間的なストレスが軽減されるでしょう。
4.入れ歯は修理より作り直したほうがいい?
入れ歯が壊れたとき、「修理で済むのか、それとも作り直すべきか」は、多くの方が迷うポイントです。
ここでは、修理では対応しきれないケースや作り直しが勧められる具体的な目安について、歯科医の視点から解説します。
修理してもすぐ壊れる入れ歯の原因とは?
Q:何度も壊れる入れ歯は、なぜ修理しても長持ちしない?
繰り返し破損する入れ歯には、構造自体の劣化や、顎の形に合わなくなっているという問題が隠れていることがあります。
とくに、5年以上使用している入れ歯は、見えない部分に歪みや摩耗が進んでおり、部分的な修理では対応しきれない状態になっていることもあります。
また、過去に応急処置を重ねた入れ歯は、もともとの設計から外れてしまい、全体のバランスが崩れて再び破損しやすい傾向があります。
このような入れ歯は、「直してもまた壊れる」を繰り返す悪循環に陥ることがあります。
噛めない・痛い入れ歯は修理しても良くならない理由
Q:痛みや違和感のある入れ歯を修理すれば、また快適に使える?
答えは必ずしも「はい」とは限りません。修理はあくまで「壊れた部分を元に戻す」作業であり、根本的な噛み合わせや設計の問題を改善するものではないためです。
たとえば、「噛むと痛い」「食事中に外れる」「話しづらい」といった症状は、入れ歯の高さ・厚み・支え方などに起因する場合が多く、修理では根本解決が難しいのです。
また、歯ぐきや顎の骨は年齢とともに変化するため、昔は合っていた入れ歯でも今は合わなくなっている可能性があります。
こうした不調が続いている場合は、修理よりも一から作り直して設計を見直す方が結果的に快適に使えることが多くあります。
新しい入れ歯を作り直すタイミングと判断基準とは?
Q:入れ歯を作り直すのは、どんなとき?目安はある?
以下のような場合は、修理ではなく新製作を検討することをおすすめします。
・入れ歯の使用年数が5年以上
・修理を3回以上している
・噛み合わせが左右でずれてきた
・入れ歯の変色やにおい、劣化が気になる
・食事や会話に不便を感じる時間が増えた
また、歯科医の診断で「設計変更が必要」と判断された場合は、無理に修理を続けるよりも、長期的に見て費用対効果が高いことが多いです。
新しい入れ歯は、「噛める」「外れない」「痛くない」を一から再設計できるため、快適な生活の再スタートにつながります。
5.入れ歯修理を依頼する歯科医院はどう選べばいい?
「どこで修理をお願いすればいいかわからない」「近所の歯科で大丈夫なのか不安」という声をよく耳にします。
ここでは、入れ歯修理に強い歯科医院の見分け方と、選ぶ際の注意点を、専門的な視点から解説します。
入れ歯に強い歯科医を見分ける方法とは?
Q:どんな歯科医が入れ歯の修理に詳しいの?
入れ歯の修理や調整は、歯科医師なら誰でも行えるわけではありません。
とくに重要なのが、「補綴(ほてつ)分野の経験が豊富かどうか」という点です。
補綴とは、入れ歯や差し歯などの人工物で噛み合わせや見た目を回復させる専門分野で、この分野の知識と技術がある歯科医は、入れ歯の状態を総合的に診断できます。
ホームページや案内に「補綴専門」「義歯外来」などの記載がある医院は、入れ歯治療に特化した対応が期待できると考えてよいでしょう。
「補綴専門医」や「入れ歯専門外来」がある医院のメリット
Q:「専門医」の医院にお願いすると、何が違うの?
補綴の専門医が在籍する医院では、単なる修理にとどまらず、噛み合わせや使用年数も含めて総合的な判断がされます。たとえば、破損の根本原因が設計不良や顎の変化であれば、その場しのぎの修理ではなく、長持ちする形への提案が期待できます。
また、専門外来のある医院では、院内に技工士が常駐している場合も多く、即日対応や精度の高い修理ができる環境が整っています。
修理だけでなく「入れ歯がなぜ壊れたのか」を明確にしたうえで、今後のトラブル防止に繋がる対策まで考えてくれるのが専門医院の強みです。
5. まとめ
入れ歯の修理には、費用・時間・状態に応じた判断が欠かせません。
保険と自費での違いや、即日修理ができるケース、修理より作り直しが適しているタイミングなどを理解しておくことで、安心して治療に進めます。
入れ歯に不調や不安を感じたら、入れ歯治療に詳しい歯科医へ早めに相談することが大切です。