前歯は、口を開けた時に一番に見える部分です。それだけに、見た目や相手に与える印象にとても影響してきます。特に上顎の前歯に隙間が出来ることがあります。
前歯に隙間ができる原因や状態によって、1度のご通院で回復できるものを含めて大きく4つの治療法があります。それぞれのメリット、デメリット、治療法と期間、費用などについて詳しくご説明します。
1.前歯に隙間(正中離開)ができる原因
上の顎に多いのですが、2本の前歯の間に隙間が生じることを正中離開といいます。
歯の1番中心2本の前歯は、生えてくる時、実は中心から少し離れる方向に生えてきます。ですので生えた時点では、前歯の間に隙間があります。
この隙間は、隣の歯がはえるときに2本の前歯(中切歯)を押してくることにより閉じるのです。この時に、何らかの原因で閉じることが出来なければ、すきっ歯(正中離開)が生じます。
では、前歯に隙間を作る正中離開はどうしておこるのでしょうか?
1-1.上顎正中過剰埋伏歯
鼻の下に余分な歯が埋まっていることがあります。これを上顎正中過剰埋伏歯といいます。余分な歯ですので、埋まったままになります。もちろん、形がおかしかったりもします。
この上顎正中過剰埋伏歯が、2本の前歯(中切歯)の根の間にあると、隣の歯が2本の前歯を押して隙間を閉じようとしても、過剰歯にあたって閉じることが出来ません。こうして正中離開が生じることがあります。
1-2.上唇小帯の異常
上唇小帯とは、上唇の内側から、2本の前歯間の歯茎にのびてくる筋のことです。上唇小帯が、2本の前歯の間を通って上顎の内側まで伸びていることがあります。このような上唇小帯の異常があると、2本の前歯の隙間を閉じようとしても、小帯が邪魔をしてしまうために隙間が残ってしまい、正中離開が生じることになります。
1-3.側切歯が小さい、もしくは無い
側切歯が2本の前歯を押してくることで、前歯の隙間を閉じるわけですが、その側切歯が小さすぎて押す力が足りなかったり、もしくはそもそも無かったりすると押すこと自体が出来なくなりますので、隙間は残ったままになります。
1-4.指しゃぶりや舌などの癖
指しゃぶりをしていると、指が内側から押すことになります。すると、前歯が外側へ向かって広がっていきます。これにより前歯に隙間が生じます。また、舌で前歯を押す癖があると、同様に前歯が広がってきますので、隙間が生じる原因になります。
1-5.乳歯が残っている
むし歯で乳歯がぼろぼろになってしまった場合などに多いのですが、生え変わる時に、乳歯の一部が残ってしまうことがあります。もし、2本の前歯の間にわずかでも残ってしまったら、側切歯が押してきても、隙間が閉じられなくなります。
1-6.歯ぎしり
歯ぎしりをする癖があると、歯がすり減ってくるだけではなく、歯並び全体が外側に広がってくるようになります。そのために、正中だけでなく、広範囲の歯と歯の間に隙間が生じる様になります。
2.前歯に隙間の(正中離開)治療法
2本の前歯が生えている途中であれば、正中離開の原因を取り除くことにより、自然と隙間が塞がってくることもあるのですが、成人以降はそれが望めません。何らかの処置をしなければ隙間はなくなりません。
2-1.ダイレクトボンディング法
ダイレクトボンディング法とは、コンポジットレジンとよばれるプラスチックを2本の前歯の隙間側にくっつけて、正中離開部分を埋める治療法です。
費用は、歯科医院によって異なりますが、2〜5万円ほどになるようです。
2-1-1.ダイレクトボンディング法の治療法
①歯の表面を研磨します。基本的には削りません。
②歯の表面を乾燥させるため、防湿します。きちんと乾燥していないとうまくくっつかなくなります。
③歯の表面に接着剤を塗ります。接着剤は、特殊な光を当てると接着力を発現するものが多いです。そのため、専用の光照射器を使って、ぬった接着剤に光を当てます。
④コンポジットレジンを詰めていきます。このとき、きれいな形になる様に、透明なセロファンのようなシートをはさみながら、詰めていく様になります。なお、コンポジットレジンは、特殊な光を当てると固まる性質があるので、専用の光照射器を使って、光を当てて固めていきます。
⑤詰めたコンポジットレジンの形を整え、表面をつるつるにし段差を無くすために、磨きます。
以上がダイレクトボンディング法の方法です。およそ30分ほどで仕上がります。
2-1-2.ダイレクトボンディング法の特徴
1日で完了出来ます。また、歯を削らないので、削ることにより歯がしみてきたり、削った面からむし歯になったりするリスクがありません。
一方、接着剤でつけているため、接着剤が弱くなると外れやすくなります。また、時間が経つと、コンポジットレジンと歯の隙間に着色してきたりすることがあります。
なお、前歯の真ん中に出来た隙間をダイレクトボンディング法で埋めるときは、隙間の両隣の歯に均等に盛り上げて埋めます。片方の歯だけに盛り上げると、歯の左右の対照感が失われ、見た目がおかしくなるからです。
2-2.被せものによる治療法
2本の前歯を削って、被せものを装着し、被せものの形を正中離開を閉じる様な形にして、正中離開を無くす方法です。
2本の前歯にむし歯が出来ていれば、むし歯治療の一環として保険診療の被せものをつけることが出来ますが、単に隙間が生じているのを治す目的であれば、保険診療で被せものを装着することは出来ません。そのため、自費診療で被せることになります。
2-2-1.陶材焼付鋳造冠
陶材焼付鋳造冠とは、別名メタルボンド、メタルセラミックなどともよばれる被せものの一種です。金属の骨格の周囲を白いセラミックで覆っています。金属は、内側のごく一部が露出するだけなので、まず見えません。白いセラミックは、透明感もありとても美しくし上がります。
費用は、歯科医院によって異なりますが、8〜12万円ほどになるようです。
2-2-2.ジルコニア冠
ジルコニア冠とは、オールセラミックともよばれるタイプの被せものです。オール(すべて)という名称の通り、金属はいっさい使わず、すべて白いセラミックで作ります。
セラミックには透明感が備わっており、そのために、元々の歯と同じくらいの美しさを示します。金属を全く使っていないので、金属アレルギーがあっても安心して装着出来ます。
費用は、歯科医院によって異なりますが、8〜15万円ほどになるようです。
2-2-3.被せものによる治療の特徴
被せものによる治療法は、どちらの方法を選んでもダイレクトボンディング法よりも外れにくい上に、段差が無いため、時間が経っても同じ白さを維持することが出来ます。
一方、歯を削らなければならないので、歯がしみてきたり、削った面からむし歯が出来てきたりする可能性があります。
2-3.ラミネートベニア法
出典:大阪大学歯学部附属病院
ラミネートベニア法とは、正しくはポーセレンラミネートベニア法といいます。これは、前歯の表面の色具合と形をよくするために行なわれる治療法のひとつで、1984年に開発されました。
具体的には、前歯の唇側の表面を薄く均一に一層削りポーセレンを前歯の表面にはりつけて治します。
ポーセレンとはセラミックのことです。ラミネートとは物を貼りあわせること、ベニアとは化粧張りのことで、特に、合板の上に貼った上質な薄板を指す表現です。つまり、セラミックの人工物を歯に貼りあわせて、見た目を改善させるという意味です。
費用は、歯科医院によって異なりますが、5〜10万円ほどになるようです。
2-3-1.ラミネートベニア法の適用条件
ラミネートベニアは、薄いポーセレンを歯の表面に接着剤を使って貼付ける治療法ですので、外れない様にするために条件があります。
①接着する面積が広い
接着面積が広い方が、接着力が高くなりますので、ラミネートベニアが外れにくくなります。
②健全な歯の3分の2以上に相当する歯質が残されている。
歯がむし歯その他の理由で、健全な部分が少なくなっている場合は、ラミネートベニアではなく、被せものを装着して治した方がいいでしょう。
③接着面に象牙質がほとんど露出していない
接着剤のもつ接着力は、エナメル質に対する接着力のほうが象牙質のそれよりも秀でています。形成した時に、エナメル質が残らない様な状態の歯は、ラミネートベニアが外れやすい可能性がありますので、避けた方がいいかもしれません。
④歯並びがそろっている。
ラミネートベニア法を行なおうと思っている歯が、傾いているなどゆがんで生えている場合は、ラミネートベニア法を直ちに行なうことは避けた方がいいでしょう。まず矯正歯科治療を行なって、歯の位置を修正することが優先となります。
⑤歯ぎしりや食いしばりの癖がない
歯ぎしりや食いしばりの癖があると、ラミネートベニアが欠けてくる原因になります。
2-3-2.ラミネートベニア法の治療法
①歯の唇側の表面だけを一層削ります。削る厚さは0.5[mm]程度です。
②歯型を取ります。
③歯型に石膏を流し込んで、歯の模型を作ります。
④出来た模型を利用して、ポーセレンラミネートベニアを作製します。
⑤出来上がったポーセレンラミネートベニアを専用の接着剤を使って装着します。
2-3-3.ラミネートベニア法の特徴
歯の表面を薄く削るだけなので、前述の被せものによる方法よりも、歯がしみてくるリスクやむし歯になるリスクを低く抑えることが出来ます。一方、被せものの際にはない条件がいくつかあります。適応をしっかりと確認してから行なう必要があります。
2-4.MTM
MTM(Minor Tooth Movement)とは、歯の部分的矯正治療のことです。矯正歯科治療というと、上顎と下顎の全ての歯に針金をかけたりして、全部の歯の位置関係を改善させる治療です。
対して、MTMの場合は、ごく一部、極端な話では歯を1本だけを動かして、ごく限られた範囲の歯の位置関係を改善させる治療になります。ですので、矯正歯科治療のように、お口全体の歯に装置が装着されることはありません。
では、ごく一部の歯をどのようにして動かすというのでしょうか?
2-4-1.マウスピース
マウスピースを使って歯に力をかけて、歯を動かす矯正治療法があります。これを応用すれば、正中離開部分を塞ぐことが出来ます。
歯を少し動かし、マウスピースを新しくし、また歯を少し動かし、マウスピースを新しくし、というように、歯を少し動かすたびに、マウスピースを新しく作りかえて治します。
ですので、すぐに完了するわけではないので時間はかかりますが、矯正歯科治療のような針金がないので、見た目も損なわれず、歯を削らないので傷めることも無いのが特徴です。
費用は、マウスピースを何回作りかえるかによって異なってきますので、主治医の歯科医師に相談してみてください。
2-4-2.MTM治療法の手順
①動かしたい歯を決めます。今回の場合は正中離開の改善が目的ですので、左右の2本の前歯になります。
②上下顎の歯型を取ります。
③歯型に石膏を入れて、歯の模型を作ります。
④模型上で2本の前歯を切り離し、隙間に向かって少し動かして固定します。
⑤固定された模型を使って、マウスピースを作ります。
⑥マウスピースをお口に装着します。
⑦マウスピースの形に合う様に、歯を押す力が歯にかかります。この力により歯を動かします。
⑧マウスピースがぴったり合う位置にまで歯が動いてくれば、また②からの手順を正中離開が閉じるまで繰り返していきます。
2-4-3.MTM治療法の特徴
歯を削ることもありませんし、詰めたものが外れることもありません。歯の形も変わらない利点があります。
ダイレクトボンディング法や被せものによる治療にしても、隙間を埋めますので、歯の形が正方形に近くなってしまうため、見た目に微妙な違和感が生じます。
なぜなら、2本の前歯の形は、縦の方が長い長方形だからです。その点、この方法では、隙間を埋めるために、歯そのものを動かすため、歯の形に変化は生じません。しかし、歯を動かすのには時間がかかります。
まとめ
前歯に隙間がある場合に治す方法は複数あります。
どの方法にもさまざまな特徴があります。どの方法がいいか、主治医の歯科医師と相談して、納得の上で選ぶ様にしてください。
補綴(入れ歯/ブリッジ/かぶせ物)の専門歯科医師との無料相談実施中
歯が抜けて長く悩んでいたり、歯が抜けてしまいそうで専門の歯科医師へ相談してみたいけど、どこへ相談してよいかわからない方など、まずはハイライフグループへ無料で相談されてみませんか?
ハイライフでは、補綴(入れ歯/ブリッジ/かぶせ物)専門歯科医師が全国で無料相談を実施しています。
無料初診相談をご希望の方は、以下の「お申し込みページ」もしくはお電話にてお申込みください。※予約制
入れ歯/ブリッジ/かぶせ物など歯が抜けた(抜けそう)で、お困りの方はお気軽にご相談ください。
ハイライフグループは、国内最大の入れ歯専門歯科グループです。専門の歯科医師があなたに合った治療方法をご提案いたします。