2022.04.15

顎関節症の原因と手術を伴わない治療方法

顎関節症の原因と手術を伴わない治療方法

「顎関節症」という病気をご存じでしょうか?口を開けようとすると、両耳の前の辺りにある顎関節や顎を動かす筋肉に痛みが出たり、口を大きく開けられなくなったり、口を開け閉めする時に顎関節から音が出る、というのが主な症状です。
日本人の2人に1人は何らかの顎の異常を経験しているとも言われ、顎関節症は私たちにとても身近な病気です。
顎関節症の予防や症状の消失には、患者様ご自身のセルフケアが何よりも重要です。今回は顎関節症を招く主な4つの原因と治療方法のポイントをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

1. 顎関節症とは

顎関節症とは、口を開ける時の顎関節や顎の筋肉の痛み、口の開けにくさや、顎関節から出る音を主な症状とします。
これらの症状の中の一つの症状があり、他の病気が否定された時に「顎関節症」と診断されます。

1-1. 顎関節症かどうか確かめるセルフチェック法

顎に気になる症状がある場合、顎関節症かどうかを確かめるセルフチェック法があります。
以下を読んで結果を確認してみてください。

① 口を大きく開いたとき、人差し指から薬指を並べた3本指を縦にして入りますか?
(1.すっと入る 2.ほぼ問題ない 3.どちらともいえない 4.やや困難 5.全く入らない)
② 口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがありますか?
(1.全くない 2.たまになる 3.どちらともいえない 4.しばしばある 5.いつもある)
③ 口を大きく開いたとき、まっすぐに開きますか?
(1.いつもまっすぐ 2.たまに曲がる 3.どちらともいえない 4.しばしば曲がる 5.いつも曲がる)
④ 干し肉、するめ、タコなど硬いものをたべるとあごや顔が痛みますか?
(1.痛まない 2.たまに痛む 3.どちらともいえない 4.しばしば痛む 5.いつも痛む)

《チェック結果》
回答の点数を全て足してみて、合計数値が8.6以上で顎関節症の可能性があります。
また、②の「口を大きく開け閉めした時、あごの痛みがありますか?」に「はい」の回答の人も顎関節症の可能性があります。
その際には、顎関節症の専門医の受診をお勧めします。
(引用:一般社団法人日本顎関節学会)

2. 顎関節症の原因と症状

顎関節症の原因は「かみ合わせの悪さ」だとされていた時代もありました。
しかし、歯のかみ合わせの悪さが顎関節症に直結するという考え方は現在では否定されています。
顎関節症の原因として現在世界的に認められているのは、「多因子病因説」という考え方です。
顎の関節や筋肉に負担をかける因子はたくさんあります。その因子がいくつも集まって顎関節や筋肉に負担がかかり、患者様の顎関節や筋肉の耐久力の限界を超えると症状が現れるという考え方です。
それでは、顎関節症を招いてしまう因子と、症状を見てみましょう。

2-1. 顎関節症を招く4つの因子>

顎関節症の発症には多くの因子が関係していますが、その中の主な4つの因子について見てみましょう。

2-1-1. 顎関節や顎の筋肉がひ弱

一人一人の顎関節や顎の筋肉の強さには個人差があります。これらの構造体がもともと弱いと、関節や筋肉に加わる力への耐久力が劣るので、症状が出やすくなります。

2-1-2. 安静時の歯列接触癖がある

食事や会話をしていない安静時には、口を閉じていなくても上下の歯は接触していないのが普通です。
ところが、顎関節症治療のために来院する患者様の約8割近くに、安静時に上下の歯の接触のある歯列接触癖が認められました。
この癖があると、顎関節や筋肉に常時負担がかかるので、顎関節症を引き起こしやすくなるのです。

しかもこの癖を抑えると、患者様の大部分の症状が改善することが確かめられています。
そして、歯列接触癖は顎関節症の発生に関係する因子の中、最大の因子になることも分かってきました。そのため、患者様に歯列接触癖がある時には、真っ先に対処する因子となっています。

2-1-3. 精神的緊張の持続がある

人はストレスがかかると、思わず歯を食いしばったり噛みしめたりします。すると、過度に顎関節や筋肉に負担がかかって顎関節症の発症因子となることがあります。
コンピュータ作業、精密作業、重量物の運搬や人間関係での緊張などは、精神的緊張の持続を引き起こします。

2-1-4. 悪いかみ合わせ

虫歯や歯周病で歯のかみ合わせが悪くなったまま放置したり、適合の悪い歯のかぶせ物や義歯によって、顎関節や顎の筋肉に負担をかけ続けると、顎関節症を発症することがあります。

2-2. 顎関節症の原因になるその他の因子

顎関節症の原因には、その他にも日常的にくり返し行う行動が因子となっていることがあります。
頬杖や爪噛み、うつ伏せ読書、片側での顎での噛み癖、歯ぎしり、吹奏楽器の演奏、スポーツ時の歯の噛みしめなどです。
外傷や硬いものを噛んだ時など、強い力が一時的に顎関節や筋肉に加わることでも発症することがあります。

2-3. 顎関節症の症状

顎関節症の病気の状態は現在のところ4つに分類されています。
① 顎関節から音が出る
顎関節症で最も多い症状で、関節円板というクッションが前方にずれて「カクンカクン」「ポキッ」などの音が出る状態です。
② 口を開けられなくなる
関節円板のずれが大きくなってくると、下顎を前方に動かしにくくなるので口を大きく開けられなくなります。
③ 口を開けようとすると頬やこめかみの筋肉や顎関節が痛む
口を開けようとすると頬やこめかみの筋肉が痛んだり、食品を噛もうとする時に痛みが出ることがあります。関節円板のずれがなくても口を開けようとすると顎関節の痛む捻挫のような症状が出てくることもあります。
④ 顎関節の変形による症状
これは、顎関節症が発症したまま長年放置していたり、加齢による影響で顎関節を構成する組織が変形してしまうことによって起こります。

3. 顎関節症の詳しい治療法

顎関節症の治療には、かみ合わせの調整(歯を削る・かぶせ物をする・歯列矯正する)などの、一度行うと治療前の状態に戻せなくなるような治療はできるだけ避けるべきだとされています。
顎関節症の治療として現在主に行われているのは、スプリント(マウスピース)の装着、開口訓練、マッサージ、湿布、患者様の持つ習慣や癖を改善する行動療法です。
これらの中、最も重要視されているのが患者様自ら行っていただく行動療法です。それでは順を追って説明しましょう。

3-1. 歯科医院で行う治療法

患者様の上下の歯列の模型を基に、上顎あるいは下顎の歯列にかぶせるプラスチック製のマウスピースを作ります。これを夜間睡眠中や日中の指示された時間に装着して顎関節や筋肉への負担を軽減します。
痛みが強い場合には鎮痛薬の投与、痛みのある部位へのレーザー照射や電気刺激を行って、患部の血流改善を図る場合もあります。
多くの場合、これらの治療によって症状は消失していきますが、治療開始後2週間経過しても症状の改善が見られない場合には、顎関節症の専門医に相談してみるといいでしょう。
2012年に日本顎関節学会が「顎関節症に対する初期治療の診療ガイドライン」をホームページ上に公表し、「咬合調整(かみ合わせの調整)は行うべきではない」という提言をしています。
歯科医院での積極的なかみ合わせの調整は、慎重に考えられてください。

3-2. 顎関節症専門医での治療法

顎関節症の症状がなかなか改善しない場合、専門医での治療も選択肢の一つになります。
専門医では、まず、患者様の病気の状態と病気を引き起こしている原因について詳しく調べます。その後、病状の改善と、病気の原因を取り除く治療を行っていきます。
顎関節症は多くの場合、手術などの外科的な方法を用いない保存的な治療で効果が認められます。しかし、保存治療で改善が認められないごく少数のケースでは手術による外科治療が行われます。

3-3. 患者様自らご家庭で行っていただく行動療法

顎関節症の症状改善のためには、患者様ご自身に家庭で行っていただくセルフケアが大変重要です。セルフケアは世界的にも提唱され、セルフケアなしでの顎関節症の完全消失はあり得ないと言われているほどです。
セルフケアによる十分な自己管理があれば、顎関節症の発症の予防と同時に治った後の再発も防げます。

3-3-1. 痛みのある時

痛みが強い時には、10分間を限度として保冷材などを使って患部を冷やします。冷やした後は、できる範囲でゆっくり口を開け閉めして顎関節と筋肉をストレッチします。
これを一日数回繰り返して、痛みを和らげます。食品は細かく切り分け、硬く嚙み切りにくいようなものは避けます。

3-3-2.安静時には痛みが出て来なくなった時

口を開けたり物を噛まなければ痛みが出て来なくなったら、顎関節周囲の血流を促す行動が効果的です。
・蒸しタオルなどを患部に当てて、5分間ほど温める温湿布を行います。
・親指の腹や、人差し指から薬指までの指先を患部に軽く当てて、ゆっくりと押したり回すようにしてマッサージを行います。
・開口訓練も痛みの改善を早めます。まだ顎関節に大きな負担をかけられないので、歯科医師や「顎関節症の初期治療のための診療ガイドライン」などを参考にして無理のない範囲で行いましょう。

3-3-3.顎関節症の原因になる習慣や癖を取り除く行動療法を励行する

患者様ご自身が無意識に行う歯の噛みしめや頬杖、歯列接触など、顎関節症の原因は日常生活の中のちょっとした行動の中に潜んでいます。もし、心当たりの行動や習慣があったり、歯科医師から指摘された場合には、できるだけそれらの行動を避けるようにすると顎関節症の症状改善に大きな効果があります。

まとめ

顎関節症というと、専門的な治療を受けないと治らないものかと思ってしまいますが、糖尿病や高血圧症のような、どちらかというと生活習慣に病状が大きく影響される病気の一つです。
ちょっとした顎の不調は日常生活の中で遭遇しがちです。大きなトラブルになる前に、今回ご紹介した4つの原因と治療方法のポイントをご活用ください。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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