現在の歯科医療では、むし歯によってつくられた歯の穴や、失われた歯を補うための治療等で、金属を使った治療がよく行なわれます。歯科治療で使われる金属は、一種類ではなく、何種類かの金属を混ぜ合わせてつくられた合金が使われます。
こうした金属は、概して安全性高いものなのですが、中には金属アレルギーの原因となることがあります。
金属アレルギーの症状が現れると、お口の中だけに限らず、全身的に症状が現れてくることがあります。
そこで、歯科治療において金属アレルギーの方が気をつけたいポイントなどについてご説明します。
1.金属アレルギーってなに?
金属アレルギーとは、金属が原因で起こるアレルギーのことです。
アレルギーには、いろいろな種類がありますが、金属アレルギーの場合はⅣ型とよばれる接触アレルギーになります。
金属アレルギーといいますが、実は金属そのものは生体に対してアレルギーの原因になり得ません。
金属アレルギーは、金属から溶け出した金属のイオンが、身体の中の特定のタンパク質と結合することで、身体の免疫系が異常に反応してしまうようになることで発症します。
その症状は、アレルギーとなる金属と触れた部分に、皮膚炎や粘膜炎といった接触制の炎症を起こすことが代表的です。
歯科で使われる金属による場合は、口内炎や舌炎などが多いですが、中には掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とよばれる手足の皮膚病の原因となっていることもあります。
2.金属アレルギーの検査方法
金属アレルギーがあるかもしれない場合は、問診を通してアレルギー反応との関係、つまり金属にかぶれやすいなどの症状を確認することから始めます。
そして、金属アレルギーが疑われる場合に、金属アレルギーかどうかを調べる方法としてパッチテストを行ないます。
パッチテストとは、皮膚に金属を密着させてアレルギー反応が出るかどうかを調べるテストです。48時間ほど貼付けておきます。ただ、金属アレルギーがあれば必ず陽性反応が出るというわけでもないので、不確実性がある検査方法でもあります。
なお、パッチテスト自体は歯科では行なえません。検査が必要な場合は、皮膚科で受けることになります。
3.金属アレルギーの人が歯科治療を受ける上で気をつけること
歯科治療で使われる金属にアレルギーがあったとしても、必ずしもお口の中の金属が接触している場所に、金属アレルギーの症状が現れるとは限りません。全く関係のない、たとえば手足の皮膚に症状が現れてくることもあります。
ですので、お口の中を見ただけではわからないことも多いので、金属アレルギーがある場合、かならず歯科医師に伝える様にしてください。
歯科治療では、金属を非常によく使います。もしアレルギーの原因となる金属が含まれた合金を使って治療をすると、その合金から金属イオンが溶け出して、アレルギー症状を引き起こすことがあります。
アレルギーの原因となる金属を使わないためにも、かならず伝えるようにしましょう。
4.歯科の金属による金属アレルギーが引き起こす症状や病気について
金属アレルギーのある人が、むし歯治療などで歯科治療で金属を使った治療を受けた場合、金属アレルギーの原因となる金属が直接触れているお口の中に、金属アレルギーの症状が現れてくるとは限りません。
むしろ、手や足の皮膚等お口からは慣れたところに起こってくることが多いです。もちろん、お口の粘膜に口内炎をつくることもありますし、唇やその周囲の皮膚がただれてくることもあります。しかし、お口の中に症状が全く現れてこないこともあります。
ですので、お口の中に症状がないからといって、安心することだけは避けてください。
以下に、金属アレルギーで起こるのではないかと、現在考えられている病気について説明します。
4-1.掌蹠膿疱症
手や足の皮膚に、水ぶくれをつくる病気です。この成分には細菌は含まれてはいないので、化膿して起こるような皮膚病ではありません。水ぶくれは、左右両方の手の平や足の裏によく出来ます。
そして、しばらくするとカサカサになって治ります。これを繰り返すのが特徴です。
原因はよくわかっていないのですが、金属アレルギーによる可能性も高いといわれています。
4-2.扁平苔癬
皮膚やお口の粘膜に起こる病気です。お口に出来たものを、特に口腔扁平苔癬とよび、中々治らない口内炎となります。お口の中に出来た場合の症状は、お口の粘膜に白い筋のような、もしくはレースのカーテンの様な模様や、赤い筋が出来ることが多いです。
この扁平苔癬も原因はよくわかっていません。ウィルスや肝臓病が原因の可能性にあげられていますが、金属アレルギーとの関連性を指摘する報告もあります。
4-3.接触性皮膚炎
接触性皮膚炎とは、いわゆるかぶれのことです。かぶれる原因になるものなら何でも起こりますので、金属に限りません。金属アレルギーがある場合、金属によって起こることがあります。
歯科治療で使われる金属にアレルギーがあり、その金属が触れているお口の粘膜表面が赤く腫れたり、ただれたりする場合は、この病気の可能性があります。
5.金属を使わない治療法
歯科治療に用いる合金の成分に、金属アレルギーをおこす金属が含まれている場合は、その合金は使うことが出来ません。歯科治療では金属を使った治療が多いのですが、金属を使わないで治す方法もあります。
ここでは金属を使わないむし歯の治療法について紹介します。
5-1.コンポジットレジン充填法
コンポジットレジンとは、歯科治療に用いられるプラスチック製の素材です。
コンポジットレジンには、歯と同じ様な白さが与えられており、コンポジットレジンで治したむし歯の歯は、治した後が目立ちにくく、きれいに仕上げることが出来ます。
コンポジットレジンは前述の様にプラスチックですので、金属を全く使いません。ですから、金属アレルギーでも安心して受けることが出来ます。
ただし、大きなむし歯には使えません。むし歯の進行度で言いますと、C1かC2までとなります。
C1とは、むし歯の初期段階でして、歯の表面を構成するエナメル質というとても硬い層にむし歯の孔が留まっている状態を言います。
そして、C2とはエナメル質の直下の象牙質までむし歯が進んではいるが深くはなく、歯の神経に影響が及んでいない状態を言います。つまり、歯の神経に影響しない段階までのむし歯治療でのみ適応出来ると考えてください。なお、コンポジットレジン充填法は、保険適応となっています。
・コンポジットレジンを使用した治療については、以下の記事で詳しく説明しています。
虫歯を削らずに保険で白く治療!コンポジットレジンとは
5-2.CAD/CAM冠(保険適応)
CAD/CAM冠とは、最近保険診療の適応を受けた金属を使わないタイプの被せものです。
従来、歯に被せる被せものは歯科技工士が手作業でひとつひとつ作っていました。それに対し、CAD/CAM冠は全く異なり、コンピュータ制御で機械が自動的に作り上げるという全く新しいコンセプトの被せものになります。
この度、保険診療の適応を受けたのは、レジン系素材というプラスチックでつくったタイプのCAD/CAM冠になり、前から数えて4番目と5番目の歯(第一小臼歯と第二小臼歯とよばれる歯です。)に適応があります。
金属アレルギーの場合に限り、例外的に6番目の歯である第一大臼歯にまで適応が拡大されましたが、この歯は食事の時にかかってくる力が大きいので、強度の面において不安な要素、すなわち噛む力に負けて割れてしまう可能性があります。
・CAD/CAM冠を使用した治療については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|新たに保険適応!白い差し歯CAD/CAM冠のすべて
5-3.硬質レジンジャケット冠
硬質レジンジャケット冠とは、コンポジットレジンでつくったタイプの被せものです。
保険適応となっていますので、保険診療で被せることが出来ます。
基本的には前から数えて1番目(中切歯)から3番目(犬歯)までの歯、すなわち前歯に適応となります。
CAD/CAM冠と同様に第一小臼歯と第二小臼歯にも使えますが、強度が十分保てるという前提の元でのみ、適応となっています。
また、金属アレルギーであれば、臼歯部にも適応出来ますが、強度の面ではやはり不安が残ります。
5-4.オールセラミック冠
オールセラミック冠とは、金属を全く使わずにセラミック系の素材のみで作り上げる被せものです。
従来のセラミック系の被せものは、内面を金属で補強した上でセラミックを貼ってつくっていましたが、オールセラミック冠では内面もジルコニアとよばれるセラミック系で作り上げることで、金属を全く使わない被せものを実現しました。
なお、最近までオールセラミック冠があまり普及してこなかったのは、このジルコニアを使った内面の補強が出来なかったために、破折の可能性が高かったからです。ジルコニアを内面に利用出来る様になったおかげで、強度の面も十分なものになりました。
まったく金属を使わないので、金属アレルギーの心配はもちろんありません。しかも、金属を使わないことで、セラミックが本来持っている透明感のある美しさを最大限引き出すことが出来、非常に自然な感じに仕上げることが出来る様になりました。オールセラミック冠は保険診療の適応外となります。
5-5.CAD/CAM冠(保険適応外)
保険適応のCAD/CAM冠もありますが、保険適応にならないタイプのCAD/CAM冠もあります。
こちらは、セラミック系の素材となります。レジン系のCAD/CAM冠と比べて強度も優れており、しかも自然な歯に近い光沢や色具合が再現されており、見た目も非常にきれいです。保険適応のCAD/CAM冠と異なり、前歯から奥歯まで使えます。
まとめ
金属アレルギーの場合の基本は、金属アレルギーの原因となる金属に触れないことに尽きます。
金属アレルギーの方の場合、アレルギーをおこす金属を使わない歯科治療をしなければなりません。
金属アレルギーがある場合は、どの金属にアレルギーがあるのかを治療前に必ず歯科医師に伝えるようにしてください。近年の歯科治療の進歩により、金属を使わない治療の選択肢が増えてきました。
保険の適応を受けた治療法もあれば、そうでないものもあります。それぞれに特徴があります。
どういった治療法がいいか、主治医とよく相談の上、決める様にしましょう。
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