鏡を見て、以前と比べて歯茎が痩せてきたとか、前はこんなに歯の根がみえていたかな…と感じた経験はありませんか?
日々の変化はごくわずかなので、なかなか変化に気づきにくいものですが、実は歯茎の形は、常に変わっています。歯茎が痩せることもあれば、反対に腫れてくることもあります。どちらの歯茎の変化もできるだけ避けたいものです。
今回は、歯茎が痩せてしまう原因と影響、歯医者での治療法や自宅でのお勧めケアなど詳しくご説明します。
1.歯茎とは?
歯茎とは、お口の表面を覆っている粘膜の一部です。歯のくびれの部分と歯を支えている歯槽骨を覆っています。
歯茎の範囲は、歯のくびれの部分から、歯槽骨を覆い始める部分あたりまでです。この境界のことを歯肉歯槽粘膜境といいます。
歯肉歯槽粘膜境は歯の表側では明確でよくわかりますが、内側はわかりにくいです。なお、正式には歯茎ではなく歯肉(しにく)といいます。
1-1.健康な歯茎
健康な歯茎は、ピンク色で、歯にしっかりとついています。また、表面には小さな点状のへこみがぽつぽつとみられます。
1-2.歯茎の構造
歯茎は、その形態から3つの部分に分けることが出来ます。
1-2-1.乳頭歯肉
歯と歯の間の歯茎です。弱い部分なので、磨き残しがあったりすると容易に腫れてきます。
1-2-2.辺縁歯肉
歯のくびれの部分をぐるっと取り囲む様に存在している歯茎で、歯や歯槽骨には接していません。辺縁歯肉と歯の間に作られる溝状の隙間のことを歯周ポケットといいます。健康な歯周ポケットは深さ2[mm]以内です。
1-2-3.付着歯肉
辺縁歯肉から歯肉歯槽粘膜境までの部分です。歯槽骨にしっかりとついているので、硬いのが特徴です。なお、この部分が歯茎の大部分を占めています。
2.歯茎が痩せる原因
歯茎が痩せることを、歯肉退縮(しにくたいしゅく)といいます。歯磨きを頑張っていても歯肉退縮はおこることがあります。そこで原因についてまとめてみました。
2-1. 不適切な歯磨き
歯茎が痩せる最も一般的な原因は、硬過ぎる歯ブラシの不適切な使い方にあるといわれています。
たしかに、歯磨きはとても大切です。歯磨きをおろそかにすると、むし歯になったり歯茎を腫らしたりする原因になります。
しかし、強く歯の付け根あたりを磨き過ぎたり、または力を入れ過ぎたりしますと、歯茎を痩せさせてしまうことがあります。
歯茎の縁は、とても軟らかいので、言い方を変えると弱い部分でもあります。歯ブラシの毛先がこの部分に当たることで、徐々に歯茎の縁が減ってしまいます。その結果として、歯茎が痩せてきます。
2-2.歯周病
歯周病も歯茎を痩せさせてしまう原因のひとつです。歯周病とは、歯槽骨が減ってくる病気です。
中には急に痛くなってくるものもあれば、大きく腫れてくるものもあります。歯茎が赤くなることもあれば、出血してくることもあります。
このように歯周病は、実にさまざまな姿で現れてきます。歯茎が痩せてくるのも歯周病の症状のひとつです。 歯茎の内側にある歯槽骨が減ることで、それにつれて歯茎も痩せてしまいます。
2-2-3.歯肉炎と歯周病の違い
ところで、歯肉炎という病名をお聞きになったことはありますか?実は、歯肉炎と歯周病は、名前は似ていますが違います。
歯肉炎とは、炎症が歯茎のみにとどまっている状態をさします。一方、歯周病は、炎症が歯茎から広がって、その他の歯周組織にまで波及している状態をしめします。
2-3.加齢
歯磨きも適切に行なわれ、歯の汚れもなく歯周病でもない場合であっても、年齢とともに歯茎が痩せてくることが知られています。
ある研究によりますと、年間に平均して約0.25[mm]ずつ歯茎が痩せてくるという結果があります。
2-4.噛み合わせ
歯ぎしりや食いしばりが原因で歯茎が痩せてくることがあります。歯ぎしりや食いしばりは、歯だけでなく歯を支えている歯槽骨や歯茎にも影響を及ぼします。歯槽骨に影響が及んだ場合は、歯槽骨が減ってしまうことになります。
2-5.歯ならび
歯ならびが悪いと、歯と歯茎の隙間に食べ物が挟まったり、磨きにくかったりしやすくなります。そのために歯茎が痩せてしまいます。
2-6.歯の矯正治療
前歯に多いのですが、稀に歯の矯正治療をした後に歯茎が痩せてくることがあります。人工的に歯を動かすことによる歯槽骨への負担が歯茎を痩せさせる理由です。
2-7.外科治療
歯の根の先に出来た膿の袋を取り除くときや、埋まっている歯を抜くときなど、歯茎を切開しなければ出来ない治療があります。切開した歯茎は、元の位置に戻して縫合しますが、切開した影響で歯茎が痩せてしまうことがあります。
3.歯茎が痩せてしまうことによる影響
3-1.見た目
歯茎が減りますと、歯茎が覆っていた歯の根の部分が見えてくることにより、歯が大きく見えてしまいます。
また、歯の根は歯の頭の部分と比べて細いため、隣の歯との隙間が大きく開いてしまいます。このため、特に前歯の場合は見た目に大きく影響します。
3-2.知覚過敏症
歯茎が痩せてきますと、歯の根の部分が露出してしまいます。そこの部分に冷たい、もしくは温かい水や食べ物などが当たる様になります。
本来、歯茎で覆われ守られていた部分ですので、こうした刺激に弱いです。また、強度も弱くすり減りやすいです。
3-3.むし歯
歯の頭の部分はエナメル質という骨よりも硬いもので覆われていますが、歯の根はそうではありません。歯の根の部分は本来歯茎や歯槽骨の内側にあり、露出していない部分ですから、硬い物質で保護する必要がないからです。
そのかわり、セメント質というもので覆われています。このセメント質は、エナメル質ほどの強さがありません。
むし歯の原因であるむし歯菌の生成する酸にも弱いです。そのために、むし歯になりやすい部分でもあります。歯茎が痩せてくると、歯の根の部分にむし歯が出来やすくなってしまうのです。
3-4.歯周病
歯茎が痩せているところは、磨きにくかったり、歯ブラシの毛先の刺激に弱かったりします。
つまり、歯茎が腫れたり、さらに減ったりしやすい状態にあるわけです。これは、歯周病を進行させてしまうことを意味しています。
3-5.歯が抜けてしまう
歯茎が痩せているということは、歯茎の内側にある歯槽骨も痩せています。歯槽骨の減少が続きますと、歯を支える骨が減るということを意味していますので、歯がぐらついてきます。
歯のぐらつきが限界に達すると、歯を抜かなければならなくなったり、自然に歯が抜けたりします。
歯を失った後は、ブリッジとよばれる失った歯の両隣にある歯を利用した被せものか、取り外し式の入れ歯をいれて治療することになります。
条件が合えばブリッジ治療で治せますが、そうでなければ部分入れ歯、もしくは歯が全て無くなっているなら総入れ歯になります。
3-6.入れ歯が合いづらくなる
入れ歯は歯茎の土手(凹凸)を利用して安定させますので、歯茎が痩せると入れ歯がお口に合いづらくなります。
特に下の顎の入れ歯や、総入れ歯の場合、この土手が入れ歯を前後左右に動かず固定させる重要な働きをしますので、歳を重ねて歯茎が痩せてしまった場合など、入れ歯治療の難易度が高くなります。
4.歯科医院での治療法
一度痩せてしまった歯茎を戻すのは、とても難しいのが現実です。
4-1. 歯磨きの指導
誤った方法で歯磨きをしていることが、歯茎を痩せさせている原因の場合は、正しい歯磨き方法を身につける必要があります。
そこで、歯磨き方法の指導を行ないます。そのとき、歯周病に効果のある歯磨き粉を使うことも効果的です。
4-2.歯周病治療
歯石や磨き残しなどが歯についていますと、歯周病を起こしてしまいます。歯周病も歯茎を痩せさせてしまいます。
歯科医院で歯石を取り除き、歯をきれいな状態に保つことで、歯周病の進行を抑え、歯茎を守ることが出来ます。
4-3.マウスピース
歯ぎしりや食いしばりなどの癖が原因の場合は、マウスピースを入れて歯にかかる負担を軽くする様にしますが、癖を治すことがとてもたいせつです。
4-4.歯肉弁移動術
痩せた歯茎の周囲に切開をいれて剥離します。そして、痩せた歯茎の部分にのばして縫合してとめる方法です。後戻りをする可能性があります。
4-5.遊離歯肉移植術
主に上顎から採取した歯茎を、痩せている部分に移植する方法です。縫合して貼付けるのですが、しっかり定着させることはなかなか難しいようです。なお、採取された側の歯茎は、自然に回復してきます。
4-6.矯正歯科治療
歯ならびが原因で歯茎が痩せている場合は、歯ならびを治すことが効果的です。
5.自宅で出来るお勧めケアグッズ
歯茎が痩せてしまう原因はたくさんありますが、もっとも大きな原因は不適切な歯磨きです。歯周病が原因の場合もありますので、歯科医院で歯石の除去や歯の表面をきれいにみがくことも大切ですが、自宅でのきちんとした歯磨きはそれ以上に大切です。
ご自身の歯に合う歯ブラシや歯間ブラシを説明してもらい、正しい使い方を指導してもらいましょう。その上で歯周病に効果のある歯磨き粉を選んで使うことをお勧めします。
5-1.歯磨き粉のタイプ
歯磨き粉にはいろいろな種類がありますが、薬効成分がお口にとどまりやすい形状の歯磨き粉をお勧めします。
5-1-1.低発泡型
泡立ちのいい歯磨き粉は、歯磨き後の爽快感がいいのですが、磨けていなくても磨いた気分になりがちです。
また、泡立ちすぎると歯茎の磨き具合が見えにくいですし、すぐにうがいをしたくなります。なるべく低発泡性の歯磨き粉を選びましょう。
5-1-2.ジェル型
より液状に近いジェル型の歯磨き粉もあります。薬効成分をお口の中にとどめておきやすい特徴があります。
5-1-3.無研磨剤型
研磨剤が入っていると着色がとれやすいメリットがあるのですが、歯茎を傷つけやすいデメリットもあります。特に歯茎が痩せてきているのなら、避けた方がいいでしょう。
5-1-4.フッ素配合型
歯茎が痩せてくると、歯の根の部分が露出してきます。本来歯茎や歯槽骨で守られていた部分ですから、むし歯に弱くむし歯になりやすい性質があります。
そこで、フッ素が含まれた歯磨き粉を使うことで、露出してしまった歯の根の部分を強くしましょう。
5-2.お勧めの歯磨き粉
5-2-1.リペリオ
殺菌作用や抗炎症作用のある薬効成分を含んでいます。血行の促進作用のある成分も含まれており、歯茎が痩せるのを抑え、傷ついた歯茎の回復を助ける効果があります。
5-2-2.コンクールジェルF
ジェル状の歯磨き粉です。発泡剤も入っていません。殺菌作用や抗炎症作用のある薬効成分と、フッ素を配合してあります。
5-2-3.システマSP-Tジェル
ジェル状の歯磨き粉です。殺菌作用や抗炎症作用ある薬効成分を含んでいます。血行を促進する成分も含まれていますので、傷ついた歯茎の活性化にも効果的です。
5-3.その他
5-3-1.コンクールF
うがい薬です。殺菌作用や抗炎症作用のある薬効成分を含んでいます。歯周病に効果的です。コップ1杯に数滴混ぜてうがいをするだけで、長時間の効果が期待出来ます。
5-3-2.システマSP-Tメディカルガーグル
うがい薬です。殺菌作用や抗炎症作用のある薬効成分を含んでいます。歯周病に効果的です。口臭を抑える成分も含まれており、すっきり感があります。
5-3-3.バトラーデンタルリンス
うがい薬です。殺菌作用や抗炎症作用のある薬効成分を含んでいます。歯周病に効果があります。インプラントをしている場合でも刺激が少ないのでお勧め出来ます。液体なので、歯周ポケットにも浸透しやすいです。
まとめ
歯茎は、常に変化し続けています。腫れていることもあれば、痩せてくることもあります。痩せてくる原因は、歯周病、誤った歯磨き、噛み合わせや歯ならびなど、いろいろあります。
歯茎が痩せることで、見た目の悪化や、知覚過敏症、むし歯などさまざまな悪影響が現れてきます。しかしながら歯茎が痩せてしまった場合、現時点では元の位置に戻すことはとても難しいです。
原因が歯周病にあれば歯周病の治療を、誤った歯磨きにあれば、歯磨き方法の指導を行ないます。
歯茎が痩せてしまった時、その痩せた原因は何か、どのような治療法がいいのか、歯科医院を受診して相談してみてください。
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