歯を全て失ったとき、インプラントで1本1本の歯を作り直すと大変な負担となります。それでは、総入れ歯だけしか治療法はないのでしょうか?
いまの総入れ歯は、科学技術の進歩に伴い、以前よりもはるかに快適で使いやすくなっています。
今回は、すべての歯を失ったときの入れ歯による3つの治療法についてご説明します。
1.全ての歯を失ったときの選択肢
全ての歯を失ったときには、総入れ歯を入れる治療法、失った自分の歯を1本1本インプラントに置き換える治療法、そしてインプラントオーバーデンチャー(インプラントを併用する総入れ歯)の3つの治療法があります。
2.保険診療の総入れ歯の利点・欠点・費用
保険診療の総入れ歯は、人工の歯と歯肉をプラスチックで製作します。
2-1.保険診療の総入れ歯の利点
保険診療の総入れ歯は適用範囲が広いため、総入れ歯での治療を希望されるほとんどの患者様に装着できます。
また、保険診療の総入れ歯に使用する材料は主にプラスチックのため、負担する費用は少なく、入れ歯が破損しても修理が容易なことが利点です。
2-2.保険診療の総入れ歯の欠点
①臭いや汚れがつき、変色やすり減りが起こる
保険診療の総入れ歯は、材料がプラスチックのため、洗浄を怠ると臭いや汚れがつきやすくなります。また、長期間使用しているうちに、入れ歯の変色や人工歯のすり減りが起こり、噛みにくくなります。
②使用感がよくない
保険診療では総入れ歯に金属が使用できません。総入れ歯を壊れにくくするため、厚くすることから強い違和感を生じ、装着に支障を来すこともあります。
また、上あごの総入れ歯では、口蓋の広い範囲を覆ってしまうため、食事のときに食べ物の温度や味がわかりづらく、発音しにくくなることもあります。
③壊れやすい
保険診療では総入れ歯に金属が使用できないため、噛み合わせの力などにより、壊れることがあります。特に、噛む力がつよい患者様では注意が必要です。
④6ヵ月以内の再製作は認められない
保険診療で総入れ歯を装着後、何らかの事情で作り替えを希望しても、基本的には6ヵ月間は保険診療での再製作は認められません。
2-3.保険診療の総入れ歯にかかる費用の目安
保険診療の総入れ歯にかかる費用の目安は、1割負担の場合で約7千円、3割負担で約2万円です。
3.自費診療の総入れ歯の利点・欠点・費用
自費診療の総入れ歯は、保険診療で指定される材料や技術の制約を受けずに、最適の材料と技術を組み合わせて製作することができます。
3-1.自費診療の総入れ歯の利点
自費診療で総入れ歯を製作する場合、保険診療とは違い、使用できる材料や技術に制限がなくなります。そのため、より高い機能回復や見た目の向上、使用感や耐久性を重視した総入れ歯の製作が可能となります。
すなわち自費診療では、患者様お一人お一人のご要望を最大限に取り入れた、最適な総入れ歯の製作が実現できます。
①金属を使用した総入れ歯
総入れ歯にチタンや金合金、コバルトクロムなどの金属を使用することで、強度や耐久性が大幅に向上します。壊れにくくなるため、長期間使用できます。また、薄くできるため、違和感や温度感覚が改善できます。
②アタッチメントを併用した総入れ歯
まだ抜かずに使用できる歯根が残っている場合に、歯根に総入れ歯を固定する装置(アタッチメント)を取り付けることで、総入れ歯の安定や物を噛む力を高められます。また、歯根のまわりの神経が残っていることで、噛み応えを感じることができ、顎の骨の吸収を予防することができます。
③シリコーン総入れ歯
シリコーン総入れ歯とは、総入れ歯が接触する粘膜側の義歯床(歯肉部分)にシリコーンを使用したものです。柔らかい素材のシリコーンを用いるので、「入れ歯が当たって痛い」などの使用感を改善できます。
④歯科医師と歯科技工士の技術
総入れ歯は非常に専門知識の必要な治療となります。単に自費の材料を使用しただけでは、ぴったりお口に合った総入れ歯はできません。
お口の型取りから、噛み合わせの調整などの治療が適正であることで、はじめてお口に合った機能する総入れ歯に仕上がります。
そのためには、歯科医師と歯科技工士の高い技術が欠かせません。
3-2.自費診療の総入れ歯の欠点
自費診療で総入れ歯を製作する場合、費用は自己負担のため一般的に高額となります。
①金属を使用した総入れ歯の問題点
総入れ歯に金属を使用することで、強度や耐久性、使用感が向上します。しかしながら、患者様に金属アレルギーがある場合には使用できません。また、金属がアレルギーを惹き起こすこともあります。
②アタッチメント併用の総入れ歯の問題点
磁石を使ったアタッチメントがよく用いられますが、磁気アレルギーやMRI検査が必要な患者様には使用できない場合があります。また、総入れ歯を外したときの見た目が気になる場合もあります。
③シリコーン総入れ歯の問題点
シリコーン部分に汚れが付きやすいことです。また、シリコーンは研磨しにくいため、調整がやや困難です。きちんと洗浄して定期健診をすることで、長期間の使用が可能となります。
3-3.自費診療の総入れ歯の費用の目安
自費診療の総入れ歯は、歯科医院や使用する材料・装置によって費用に幅が生じます。
①金属を使用した総入れ歯
使用する金属の種類や量によって費用は異なります。一般的には、上下どちらかに金属を使用した総入れ歯を製作した場合で、約50万円の費用がかかります。
②アタッチメントを併用した総入れ歯
アタッチメントを併用した総入れ歯の費用は、使用するアタッチメントの種類や金属の種類によって異なります。アタッチメント1装置当たりの費用は10万円前後で、別に総入れ歯の費用が加わります。
③シリコーン総入れ歯
シリコーン部分の費用が15~20万円前後で、別に総入れ歯の費用が加わります。
4.インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)の利点・欠点・費用
歯をすべて失ったときに総入れ歯で治療すると、噛みにくさや使用感が悪いなどの欠点があります。また、1本1本インプラントで治療すると、費用と体への負担が大きくなります。
そこで、インプラントの使用本数を必要最小限として、費用と体への負担を抑え、さらに総入れ歯の欠点を軽減できる治療法が、インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)です。
4-1.インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)の利点
インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)は、顎の骨にインプラントを固定し、インプラントの上に総入れ歯を装着します。
また、インプラントには、総入れ歯を安定させるための様々な装置が選択できます。例えば、インプラント同士をつなぐ金属製のバー(棒)や磁石の機構などが利用できます。これらの装置を併用することで、総入れ歯により強い維持と安定が期待できます。
①物を噛む力が向上
顎の骨に固定されたインプラントで入れ歯を支えるため、入れ歯のがたつきや痛みが大幅に軽減され、物を噛む力も格段に向上します。
②顎の骨の吸収を防ぐ
噛んだときに総入れ歯が粘膜に沈み込む力をインプラントで受け止めるため、総入れ歯だけよりも顎の骨の吸収を予防できます。
③違和感が少ない
使用中の違和感が少なく、より自分の歯に近い感覚で噛むことができます。また、インプラントで入れ歯を支えるため、総入れ歯だけよりも小さくできます。
4-2.インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)の欠点
非常に利点の多いインプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)ですが、欠点もあります。
①インプラントの手術が必要
インプラント埋入手術が必要なため、手術ができない全身疾患やインプラントの維持管理が困難な生活習慣・口腔内環境の場合は、適応外となります。
②治療期間が長くなる
埋入したインプラントが顎の骨としっかり固定するまで、数カ月の治療期間が必要となります。また、インプラント埋入に必要な骨量が足りない場合には、骨造成の施術が必要になる場合もあります。
③費用が高額
通常の自費診療の総入れ歯の費用に、インプラントの費用が加算されるため高額となります。
4-3.インプラントオーバーデンチャーの費用の目安
インプラントオーバーデンチャー(インプラント併用の総入れ歯)治療に必要なインプラントの本数は、患者様の顎の骨の形態やお口の中の状態によって異なります。
上顎6本、下顎4本のインプラントを想定した場合、インプラント1本約30万円、総入れ歯1つ当たり約50万円で計算すると、上顎で約230万円、下顎で約170万円となります。
まとめ
外れる!合わない!使いにくい!!というイメージが強い総入れ歯ですが、その種類と治療法の選択肢はとても多く、驚かれた方も多いのではないでしょうか?
費用や総入れ歯に求める条件など、よい総入れ歯の治療法を選択する上で、本稿が参考になりましたら幸甚です。
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