歯を失う原因は、実は年齢ごとに違いがあります。若い頃はむし歯が最も多いのですが、年と共にその比率は低下していきます。
50代では、虫歯よりも歯周病が多くなってきます。そこで、自身の歯をできるだけ長く守っていくために、徹底した歯周病の予防方法についてご説明します。
1.歯周組織の構造
歯周病を理解するためにも、まず歯周病が起こる歯周組織について説明します。
歯の根を歯根(しこん)といいます。歯根の内部は象牙質で、その表面はセメント質という部分で覆われています。歯を支える骨を歯槽骨(しそうこつ)といいますが、歯根は歯槽骨と直接くっついているわけはなく、歯根膜という靭帯を通して接合しています。
歯槽骨の表面は歯茎で覆われています。歯茎のことを正式には歯肉といいます。歯茎の歯との境の部分を歯周ポケットとよびます。この歯周ポケットの深さが、歯周病の進行状況を知る時に、重要になってきます。深さがおおむね3[mm]以内であれば正常とされますが、それを上回ってくると、歯周病とみなされます。
2.歯周病って何?
歯周病は、別名、歯周疾患ともいい、歯茎やセメント質、歯根膜、歯槽骨から構成される歯周組織におこる、あらゆる病気のことをいいます。ただし、この中には口内炎や悪性腫瘍などの病気は含まれません。
歯周病は、プラークの中の細菌が原因となって起こります。プラークとは、歯の表面についた白っぽい色のカス状のものです。歯の表面を爪でこするととれてきます。プラークは、細菌の塊でもあるために、バイオフィルムともいわれています。この細菌が歯周組織に炎症を起こすことで生じます。
ただし、病原性の高いプラークと低いプラークがあり、病原性の高いプラークで生じることが多いと言われています。
なお歯周病は、歯肉炎と歯周炎にわけられます。歯肉炎は歯周組織の炎症が歯茎に留まり歯槽骨に波及していない状態、歯周炎は歯槽骨にまで及んだ状態をいいます。歯周炎に進行してしまいますと、歯がグラグラしてきます。更に進行しますと、抜歯しなければならなくなることもあります。
3.50代で現れる歯周病の特徴とは
歯周病は、慢性疾患に分類される病気です。慢性疾患とは、進行がゆっくりとしていて、経過が長い病気のことです。
慢性疾患の特徴は、進行が遅いため、自覚症状に乏しいということにあります。なお、反対語は急性疾患と言います。急性疾患は、腫れたり痛んだりといった自覚症状が現れやすいという特徴があります。
歯周病も同じです。日々進行しているのですが、ゆっくりとしているために、自覚症状がなかなか現れてこないのです。しかも、歯周病菌自体も、病原性が強いものではないために急性化しにくく、この特性もあって気がつきにくいです。
そのため、若い頃には歯周病になっていることを意識することはほとんどありません。この頃は、歯周病よりもむし歯の方がむしろ問題となっています。
ところが、50代頃にもなると歯周病がかなり進んできます。そして、歯茎が腫れてくる、歯がグラつくなどの自覚症状が現れるようになります。この症状は、気がつかなかっただけで、以前から静かに進行していたものなのですが、知らなければそうとは思えません。ですから、年を取ってきたら急に歯周病になったと思われてしまうが、その特徴です。
自覚症状がない若い頃から、歯周病の予防を図っているかどうかが、中年期以降になり、歯周病の症状として現れてきます。
4.50代の歯周病になりやすい人
歯周病は、歯や歯周組織にのみ原因がある病気ではありません。実は、歯周病に関係する要因はいろいろあります。
4-1.歯ぎしり症のある人
歯ぎしり症は、上顎と下顎の歯の間に食べ物がない状態で無意識に行なわれます。
上下の歯が直接接触するために、歯に強い噛み合わせの力がかかってしまいます。この力が、咬合性外傷とよばれる歯周組織を破壊する作用を発現するのです。
熱心な歯磨きの効果が現れにくい、難症例の一つです。
特に、歯周病による炎症を起こしている場合、これが加わって起こると重症の歯周病に発展しやすくなります。歯ぎしりをする癖がある人は、歯科医院で適切な治療を受けることが大切です。
この場合、病原性の低いプラークでも進行します。
したがって、歯磨きなどによるプラークコントロールの効果が現れない治療が難しい歯周病となります。
4-2.口呼吸をしている人
人間の場合、発声するために口も空気が流れる様になっていますが、本来、呼吸は鼻でするものです。
口で呼吸をするとお口の中全体が乾燥してしまいます。お口は湿っている環境にあるのが正常なので、乾燥に対しとても弱いです。乾燥すると、歯茎が傷んでしまう上に、傷を治す力も低下してしまいます。また、乾燥した汚れはこびりついて取りにくく、無理に剥がすと出血してしまい、口内炎の様な状態になってしまいます。
しかし、汚れをおいておくことは、歯周病菌を増やす原因にもなります。つまり、お口が乾燥するということは、よくないのです。お口を乾燥させる口呼吸は、歯周病を悪化させる原因となります。
4-3.糖尿病などの全身疾患のある人
全身疾患の中には、糖尿病など歯周病に関係する病気があります。
一例として、糖尿病になると細菌感染に対する抵抗力が低下したり、傷ついた組織の修復力が低下したりします。歯周病は細菌感染が原因でおこり歯周組織が傷つく病気ですので、抵抗力や修復力の低下は、歯周病にとって由々しき問題です。逆に歯周病が原因で糖尿病にもなると言われています。
もし、他に貧血などありますが、何らかの病気を持っているなら、そちらの治療もきちんとうけるようにしましょう。
5.50代の歯周病になりやすい生活習慣
歯周病は、生活習慣により影響を受けます。生活習慣病の1つにあげられています。
5-1.歯みがき習慣
歯みがきをしなければ、プラークが歯の表面に付着して、2〜3日で歯茎に炎症が起こります。ここで歯みがきを行ない、歯に付いたプラークを取り除くことが出来れば、歯茎の炎症は早期に改善します。
なおこの時点では、炎症はまだ歯茎に留まっているために、歯槽骨自体に悪影響は起こりません。しかし、そうせずに、更に炎症が進行すると、歯茎から歯槽骨や歯根膜に炎症が波及します。そして、歯周病がどんどん進行していき、歯がグラグラしてくる様になります。
つまり、歯みがきをする習慣があるかないかが、歯周病の経過に大きく影響するのです。
5-2.歯科医院に通う習慣
歯周病は若い頃から、症状に乏しいのですが、ゆっくりと確実に進行していきます。若い頃から、定期的に歯科医院で歯周病の予防処置を受けていない人は、歯周病が水面下で徐々に進行していきます。歯科医院に定期的に通う習慣のない人は、歯周病のリスクが高くなってきます。
5-3.喫煙習慣
タバコを吸うと身体の毛細血管が縮んでしまいます。これはお口の中についても同じです。
毛細血管が縮みますと、血の流れが悪くなってきます。歯茎は血液を介して栄養や酸素を受け取っています。白血球などの細菌への抵抗勢力も血管を通して運ばれてきます。タバコの毛細血管を縮める作用は、歯周病を悪化させる要因になります。
完全に禁煙できるのが理想ですが、難しい場合は吸う本数を極力減らしましょう。
タバコを吸うかたにオススメできる治療法が、あまりありません。
5-4.食習慣
唾液には、歯周病菌を抑える作用があります。更に、歯周病菌や汚れを洗い流す働きもあります。つまり唾液を多く出すことが、歯周病にとってとても大切なことになります。
では、どうすれば唾液がたくさん出るのでしょうか。そのためには、しっかりと噛んで食事を食べるということが効果的です。よく噛むためには、かみごたえのある食材を選ぶことも大切です。すじ肉や、たくあんなどは、その代表でしょう。
また、繊維質の多く含まれている食材もお勧めです。野菜は食べかすが残りにくい上、歯の表面をこすって、汚れを取ってくれます。
食生活も見直すことで、歯周病対策になります。
6.歯周病のセルフチェック
こんな症状があれば、歯周病かもしれません。
6-1.歯茎が腫れる
歯茎に炎症が起こりますと、まず歯茎が腫れてきます。この時、腫れ方が差ほどではなき場合、痛みを必ずしも伴うとは限りませんので、腫れていることに気がつかないこともあります。歯茎が腫れてきますと、歯みがきの時に出血しやすくなることがあり、これを契機に腫れていることに気がつくこともあります。
6-2.歯がグラグラする
歯周病が進行して歯槽骨にまで及んできますと、歯を支える力が低下し、歯がグラグラと動くようになります。しかし、適切に治療を受ければ、初期の段階であれば歯の揺れを緩和出来ることもあります。
6-3.歯茎から膿が出る
歯茎を押すと、歯周ポケットから膿が出てくる場合があります。これは歯周組織が化膿していることを意味しています。つまり歯周病のサインです。
6-4.歯茎が下がる
歯茎が下がってきたと思ったとき、その原因は歯周病かもしれません。
間違った歯磨きによって、歯周病ではなく歯茎が下がる事も多いので要注意です。
6-5.口臭がする
口臭の原因はいろいろあります。中には生理的口臭といって治療対象とならないものもありますが、そうではない、いわゆる病気口臭の原因の筆頭にあげられるのが、歯周病です。口臭が気になるなら、歯周病のサインかもしれません。
7.50代からの歯周病予防毎日編
歯周病には、日々のお口のケアが大切になってきます。
7-1.歯みがき
プラークコントロールは、歯周病対策の基本です。すなわち、毎食後に歯みがきを丁寧に行なうことがとても大切になってきます。
そこで、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシや糸ようじを使ってください。糸ようじはデンタルフロスともいい、どちらも同じものを意味しています。
歯ブラシだけでは、歯の表面は磨きやすいのですが、どうしても歯と歯の間は磨きにくいです。年とともに広がってきた歯と歯の間を効果的に掃除するには、歯間ブラシや糸ようじなどの歯と歯の間を得意とする道具を上手に使う必要があります。
7-2.歯磨き粉
歯磨き粉の中には、歯周病対策の歯磨き粉が製品化されています。この歯磨き粉の特徴は、歯周病菌の殺菌作用のある薬効成分や炎症を抑える作用のある薬効成分を配合している点にあります。この時、出来れば低発泡性の製品を選ぶことをお勧めします。泡立ちがよい歯磨き粉ですと、泡の作用で爽快感を容易に得ることが出来るのですが、そのためにかえってきちんと磨けていないのに磨けた気になってしまうことがあるからです。ですので、低発泡性の歯磨き粉の方がいいです。歯周病に効果のある歯磨き粉を使うことで、歯周病から歯を守りましょう。
7-3.デンタルリンス
デンタルリンスとは、うがい薬のことです。いろいろなデンタルリンスが製品化されていますが、歯周病菌の殺菌作用や歯茎の炎症を抑える作用のある薬効成分を配合したものがあります。製品によって、歯みがき前に使うか、歯みがき後に使うかという違いがありますが、歯周病ケアのデンタルリンスを使うのもいいでしょう。もし、使ってみて刺激性が強過ぎると思われる場合は、アルコールの含まれていないタイプをお勧めします。
歯周病、あるいは歯肉炎と診断された方にオススメです。
7-4.電動歯ブラシ
ホームケア製品はたくさん出ています。その中でも電動歯ブラシを使うことは効果的です。
・歯みがきについては、以下の記事で詳しく説明しています。
保存版|歯周病を予防する正しい歯磨きと歯ブラシの選び方
・歯磨き粉については、以下の記事で詳しく説明しています。
歯周病に効き目あり!歯磨き粉14選!
・歯間ブラシと正しい使い方については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|おすすめの歯間ブラシと正しい使い方で防ぐ3つの病気
8.定期的メインテナンス
歯周病対策は、日々の歯みがきを丁寧に行なうことによるプラークコントロールが基本となります。これをしっかりと行なわないと、歯周病が悪化することになります。
しかし、自宅での日々の歯みがきをしっかりと行なっていても、そこには限界があります。歯ブラシでプラークを全て取り除くことはかなり難しいですし、歯石に至っては全て取り除こうとしても無理です。
そこで、定期的に歯科医院に通うことで、取りきれなかったプラークを取り除いてもらい、歯石を除去することで、歯茎の状態を良好に保つ様にしましょう。これをメインテナンスといいます。
定期的なメインテナンスを受けることにより、歯茎の炎症を抑え、歯周病が進行しない様にしましょう。
まとめ
歯周病の進行はとてもゆっくりとしたもので、なかなか自覚症状が現れません。
そのため、50代頃になって初めて症状が現れ、急に歯周病になったと思われがちです。しかし、その進行は若い頃から徐々に、そして確実におこってきたものです。
若い頃から歯科医院で歯周病の予防処置を受けていると、中年期以降、歯周病で困る確率がグンと減ってきます。
まずは、歯周病なのかどうか、歯周病の場合どの程度なのかを知りましょう。
その上で対策を歯科医師と相談してください。多くの方が歯周病にかかりますが、歯周病にならない方もいらっしゃいます。
診断もなく闇雲に歯磨きに頼るのも危険です。歯周病を歯科医院とともに適切にコントロールし、歯を守っていきましょう。
そのことが60代以降の生活を充実したものにできます。
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