2020.10.09

入れ歯のお悩みを解消するさまざまな入れ歯の種類

歯を失ったときの治療法のひとつに、入れ歯があります。保険診療で入れ歯治療をすることは可能ですが、保険診療の入れ歯は、全国どこの歯科医院でも同じ素材で同じ費用で作ることが出来る利点があります。しかし、保険で作る入れ歯が合わない、もしくはより快適な入れ歯が欲しいという場合は、保険診療ではない入れ歯を作ることになります。
今回は、保険診療外で使用ができる、さまざまな入れ歯の種類について、その利点と欠点を全てまとめてご説明します。

1.入れ歯とは

入れ歯は正式名称を「義歯(ぎし)」といいます。入れ歯は、大きく分けて2種類あります。
全ての歯を失った時に適応される「総入れ歯」と、一部の歯のみ失った場合に使われる「部分入れ歯」です。

1-1.入れ歯の構造

1-1-1.部分入れ歯

部分入れ歯
部分入れ歯の場合は、自分の歯がお口の中に残っています。そこで通常は、クラスプとよばれる金具を歯にかけていればの安定を図ります。
そのため、部分入れ歯は、人工歯と義歯床とよばれる人工歯がのっているピンク色のプラスチックの部分、クラスプから構成されています。また、両方の奥歯に離れた部分入れ歯を入れる場合は、バーとよばれる幅3~4[mm]ほどの金属を使って両方の部分入れ歯を繋げることがあります。

1-1-2.総入れ歯

総入れ歯
総入れ歯の場合は、お口の中にはもう歯が残っていません。
そのために、部分入れ歯にみられる様なクラスプやバーはありません。人工の歯とピンク色のプラスチックで歯茎部分(義歯床)が作られています。
総入れ歯は、部分入れ歯とは異なり、歯に金具を入れて安定を図ることが出来ません。
そこで吸盤と同じ仕組みで、顎に吸い付く様にして安定を図ることが大切になってきます。
歯の根の部分を残せる場合には、根を利用してマグネットなどで入れ歯を固定する(オーバーデンチャー)ことで、緩みやガタつきを抑える治療法も選択が可能です。

1-2.保険診療での入れ歯について

保険診療の入れ歯は、使用出来る歯科材料が決まっています。義歯床はコンポジットレジンとよばれるプラスチックで作られます。
人工歯はレジン歯・スルフォン歯・硬質レジン歯・床用陶歯の中から最適なものを選びます。
クラスプは金属製になりますが、その素材は金合金・金銀パラジウム合金・コバルトクロム合金から選ぶようになります。

2.ノンクラスプデンチャーとは

ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは部分入れ歯のひとつです。
部分入れ歯は、残された歯にクラスプとよばれる金具のバネをかけて安定を図る構造になっています。保険診療で作られる部分入れ歯は、金属製の金具を用いています。
針金状の細いものと、もう少し太いけれどしっかりしたタイプの2つあります。しかし、クラスプは金属で作られていますので、どうしても目立ってしまいます。そこで、クラスプを使わない部分入れ歯として、ノンクラスプデンチャーが考案されました。(部分入れ歯のみ使用可能です。)

2-1.ノンクラスプデンチャーの特徴

2-1-1.見た目がよい

ノンクラスプデンチャーには金属製のクラスプがありません。その代わりにノンクラスプデンチャーでは、部分入れ歯の義歯床の部分を延長して、歯にかける構造になっています。こうして安定を図っていますので、目立ちにくいです。特に前歯の場合、部分入れ歯を入れていることさえ気づかれにくくなるほど、見た目が改善されます。

2-1-2.強い

本来はクラスプに代用されることのない義歯床部分を使って、安定を図る様にしています。そこで、保険診療の部分入れ歯よりも強いレジンを使って作られています。そのために、部分入れ歯全体の強度が、保険診療のものと比べて強くなっていますので破損しにくくなっています。

2-1-3.修理が困難

ノンクラスプデンチャーは強くて破損しにくいのですが、一度破損したときの修理が難しいという難点があります。

2-1-4.ゆるみを治しにくい

金属製のクラスプであれば、ゆるくなってきたときにもう一度きつく締め直すことができますが、ノンクラスプデンチャーの場合はできません。

3.金属床義歯とは

プラスチックと金属の入れ歯比較イメージ
保険診療の義歯の義歯床(歯茎の部分)はレジンのみで作られています。レジンはプラスチックの一種です。
加工しやすい利点はあるのですが、分厚くなったり、感触が悪かったりします。そこで、レジンのかわりに金属で義歯床を作ったものが金属床義歯です。(部分入れ歯、総入れ歯の両方で使用が可能です。)

3-1.金属床義歯の材料

金属床義歯に使われる金属材料は、主なもので3種類あります。

3-1-1.金合金

金合金は適合性に優れているうえに、金の光沢も変わらないので、長期にわたり安定感と美しさを保つことが出来ます。また、金は軟らかいのでやじみなすい性質もあります。金属アレルギーもほとんど起こりません。

3-1-2.チタニウム合金

チタニウム合金は、アレルギーを起こすことがほとんどなく、身体にとてもなじみやすい安全性に優れた素材です。インプラントにも使われるほどの強度もあります。

3-1-3.コバルトクロム合金

義歯床の厚みを薄く出来、熱も感じやすく出来るという金属床の特性を持っています。しかも、金やチタニウム合金と比べて安価にできますが、一般的な入れ歯と比べると高価ではあります。

3-2.金属床義歯の特徴

3-2-1.厚みが薄い

レジンよりも強度に優れていますので、厚みを薄くすることが出来ます。厚みが薄くなるので、お口の中での異物感が軽くなります。

3-2-2.熱を感じやすい

レジンよりも金属の方が熱を伝えやすい性質があります。温かいもしくは冷たい食べ物を口に入れた時、レジンの入れ歯ですと、そこの部分だけ感じる温度に差が生じてしまいます。金属製の義歯床にすることで、お口全体の温度感覚を均一にすることが出来ます。

3-2-3.汚れにくい

金属部分は、レジンと比べてよごれが付きにくく、かつ汚れても洗い易いです。

3-2-4.破損や変形が少ない

レジンよりも金属の方が強いので、破損しにくい上に、変形もしにくいため、長期間にわたり、安定した装着感を維持出来ます。

3-2-5.緩んだ時に内面を合わせにくい

金属床義歯の場合も、歯茎が時間とともにやせてくることは避けられません。何年か使い続けると、どうしても隙間が出来てしまいます。そのとき、金属床の内面を埋めて隙間を無くす様な補修は難しいです。

4.イボカップ床義歯

イボカップ床義歯とは、イボカップとよばれる特殊なレジンを用いて作られた義歯のことです。素材的にはレジンの仲間ですので、外観は従来の保険で作られる義歯と大差ありません。

4-1.イボカップ床義歯の特徴

4-1-1.強度が優れている

従来型のレジンと比べて、とても硬いので破損することがほとんどありません。そして硬さが優れているため、その分厚みを薄く作ることが出来ます。

4-1-2.変形やゆがみが少ない

作製時に約3[t]もの圧力をかけて作ります。レジンは固まる時に変形を起こしやすい性質があります。そのため、変形しない様に圧力をかけるのですが、従来型のレジンと比べてとても高い圧力をかけることで、変形が起こりにくくしています。加えて、ゆがみも少ないです。そのために、適合状態がとても良好に出来ます。

4-1-3.汚れや臭いが少ない

高圧下で作製することで、従来のレジン床義歯では避けられなかった気泡の発生も少なくなっています。
入れ歯の汚れや臭いは、この気泡に食べカスや細菌が入り込むのが原因です。そのために、汚れや臭いがつきにくくなっています。掃除もし易いです。

5.マグネットを使用した入れ歯

マグネット入れ歯
部分入れ歯を作る時に、クラスプの代わりに磁石を使った入れ歯です。残っている自分の歯の根に磁力を帯びた金属を埋め込み、部分位入れ歯側には磁石を装着し、磁石の作用で安定を図るようにしたものです。

5-1.マグネットを使用した入れ歯の特徴

5-1-1.見た目が良い

クラスプがないので、見た目に違和感が少なくすることができます。

5-1-2.取り付けや取り外しがしやすい

クラスプをつけた部分入れ歯と比べて、外すのもつけるのも簡単です。

5-1-3.ギリギリの歯でももたせることができる

一般的にクラスプをかけることができないような歯は、抜歯して入れ歯で覆うようになります。しかし、マグネットの入れ歯の場合、抜歯せざるをえない状態の歯でも、マグネットを装着することで、入れ歯の支えとして利用することができます。

5-1-4.修理がしやすい

一般的に保険診療外の入れ歯は、破損した時に修理がしにくいです。しかし、この入れ歯に関しては、比較的修理がしやすいです。

5-1-5.ペースメーカー患者には使えない

ペースメーカーを使っているとき、マグネットの入れ歯は使えません。
また、MRIの撮影時に多少画像に乱れが出ることがあります。

5-1-6.磁石の力の限界

あまり強い磁石は使えないため、磁石のつけられる歯の本数や位置によっては、安定感が得られないことがあります。

5-1-7.むし歯

磁石のついた歯は目立たないため、つい歯磨きをすることを忘れてしまいがちになります。もし、きちんと手入れをしていないと、磁石と歯の隙間からむし歯が発生し、磁石が取れたり、歯が割れてしまったりする原因になります。

6.コーヌス/テレスコープ義歯とは

コーヌスクローネ
コーヌス/テレスコープ義歯は、残された歯に内冠とよばれる被せを装着し、入れ歯側には外冠とよばれる被せ歯を設置します。
内冠と外冠を合わせることで、入れ歯の安定を図っています。ですからクラスプが存在しません。
少し違いますが、ブリッジを接着せずに取り外し型にしたようなイメージです。ただし、人工歯の部分には義歯床を設けてあります。基本的には入れ歯ですから、取り外してお手入れをする必要があります。(部分入れ歯に使用が可能です。)

6-1.コーヌス/テレスコープ義歯の特徴

6-1-1.見た目が良い

クラスプをかけることなく入れ歯の安定を図ることができますので、見た目がとてもいいです。

6-1-2.安定感が良い

クラスプとは異なり、内冠と外冠を合わせて装着しますので、とても安定感が良いです。そのために、とてもよく噛むことができます。

6-1-3.違和感が少ない

ブリッジに近い形をしているので、違和感が少ないです。

6-1-4.難しい

製作にとても高度な技術が要求されます。そのために、歯が抜けて修理などが必要になる際など、修理が可能な医院が限られます。

6-1-5.非常に高価

製作費用が高額になります。また、長く使用していく際も、修理費用が非常に高価になります。
部分入れ歯から総入れ歯に作り直す際などでは、入れ歯の作り直しが必要になりますので、よくお口の状況を検討されてから治療に進む必要があります。

6-1-6.歯を削らなければならない

内冠を設置しようとすれば、必然的に歯を削らなければなりません。もしその歯が、今まで虫歯になったことのないような健康な歯であったなら、削ることでしみてきたり、むし歯になってしまったりする恐れがあります。

まとめ

保険診療外の入れ歯には、いろいろな種類があり、それぞれに特徴があります。しかし、大体1万〜3万円程度で製作ができる保険診療の入れ歯と比べると、保険診療外の入れ歯は、費用が高くなります。
もちろん、保険外の材質の入れ歯を選択すれば、希望の入れ歯に仕上がるということではなく、歯科医師・歯科技工士の技術や、きちんとした工程のうえで治療を進めることが非常に大切です。ご希望の歯科医院で、よく説明を受けて、納得した上で治療にすすみましょう。

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【監修・執筆】勝田吉美
所属:我孫子(勝田歯科医院)
略歴:1996年 日本歯科大学卒業
1996年 歯科医師免許取得
1996年 日本歯科大学付属病院臨床研修医
1997年 日本歯科大学付属病院補綴学第一講座入局
1999年 日本歯科大学付属病院補綴学第一講座助手採用
2001年 勝田歯科医院 就職
2015年 日本アンチエイジング歯科学会認定医
2015年 ハイライフ加盟

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