むし歯のイメージとしてよく浮かび上がってくるのが歯の痛みです。しかし、痛みというほどではない、歯がむずむずしたり、かゆくなったりという違和感を感じた経験はありませんか?
実はこうした違和感には、いくつかの原因が存在して、なかには治療が必要になるものもあります。
今回は、歯がむずむずしたり、かゆくなったりした時の原因や治療法についてご説明します。
1.歯がむずむずしてくる7つの原因
1-1.歯周病
歯周病とは、歯の支える組織=歯周組織に起こる病気です。歯周病は、まずは歯ぐきの炎症から始まります。すなわち、歯ぐきの腫れです。
炎症が進行していきますと、歯を支える骨である歯槽骨にまで炎症が波及して、歯がグラグラしてくるようになります。ここまでに至ると、痛みを伴うこともあります。
しかし、初期の歯ぐきが腫れている段階では、痛みを感じることは稀です。このような初期段階では、歯がむずむずしたり、かゆくなったりするような違和感を感じることがあります。
1-2.親知らずの腫れ
主に下顎に多いのですが、親知らずが化膿して腫れてくると、歯がむずむずとしたり、かゆくなったりしてくることがあります。
親知らずは、他の歯と異なり、生えてくる時にまっすぐに生えてくることの方が稀です。たいていの場合は、斜めに生えていたり、歯ぐきに一部が覆われたままだったりします。このようなとき、磨きにくいところが生じます。すると、そこの部分の歯ぐきが腫れてきます。親知らずがひどく腫れると、顔まで腫れてくることもあるのですが、腫れ始めの様な初期の段階では、そこまで腫れませんので、痛みもさほどではなく、むずむずする様な違和感程度の場合ですむこともあります。
磨きにくいところの歯ぐきが腫れるという症状は、歯周病の時と同じですが、親知らずの場合は、その生え方がよくないので、こうした腫れがよく起こることから、歯周病ではなく智歯周囲炎という病名がつけられています。
ところで、下顎に多いと前述しましたが、智歯周囲炎(親知らずの周りが腫れること)は上顎にも起こりえる病気です。
1-3.むし歯
むし歯は、むし歯菌が産生する乳酸によって歯が溶かされる病気です。
溶かされることにより、歯に穴があいてくるようになります。むし歯が深くなれば、その分歯の神経に近づいていくわけでですから、痛みを感じるようになります。しかし、初期の虫歯であれば、痛みを感じるどころか、むし歯ができていることにすら気がつかないことも多いです。
そんな初期のむし歯であっても、むし歯の穴に食べ物が詰まったりすると、周囲の歯ぐきに炎症を起こしてくることがあり、そういった時にむずむずするような違和感を覚えることがあります。
1-4.歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりをすると、歯には過大な力がかかってきます。
歯周組織には、歯根膜という歯槽骨を歯を結ぶ薄い靭帯のような組織があります。ここには幾つかの歯にとって大切な役割がありますが、その一つに歯に加わる力を感知する圧力センサーのような役割を果たしています。そのために歯根膜には感覚の神経の末端が来ています。例えば、前歯で不意にフォークやお箸などを噛むと、無意識にお口が開いた経験はありませんか?これは、歯根膜が圧力異常を感知して、口を開ける反射的な働きを起こした結果です。
また、他の役割として、歯にかかってきた力を逃すサスペンションのような機能も持っています。このようにして、歯を過大な力から守っています。
ところが、歯ぎしりや食いしばりにより、歯に大きな力が加わってくると、この歯根膜がその負担に耐え切れなくなります。その結果、炎症を起こしてしまい、圧力を感じる神経が麻痺します。
すると、歯の周囲にむずむずとしたような変な違和感やかゆみのような感じがするようになります。
1-5.磨き残し
食後の歯みがきがしっかりと出来ていないと、歯の表面には磨き残しがついてきます。こうした磨き残しは、細菌の繁殖してくる温床となります。
この結果、磨き残しのある歯の周囲の歯ぐきが炎症を起こしてきます。炎症の初期の軽い状態のとき、歯の周囲のむずむず感やかゆみとして感じることがあります。
1-6.合っていない被せものや詰め物
むし歯治療では、むし歯を削ったうえで、被せもの治療や詰め物治療をします。このとき、被せものや詰め物を歯に段差が生じない様につけることが大切になります。なぜなら、段差が出来てしまうと、その部分に食べ物が引っかかったりするからです。言い方を変えると、段差がある被せものや詰め物は、合っていないとみなすことが出来ます。
合っていない被せものや詰め物は、食べ物が引っかかったり、デンタルフロスや歯間ブラシが引っかかったりします。こうしたところが、歯ぐきを腫らしてきますと、歯のむずむず感やかゆみとして現れてくることがあります。
1-7.ストレス
ヒトの身体には、自律神経という神経があり、主に内臓系の働きを制御しています。自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は主に活動している時間に優位になり、反対に副交感神経は休んでいる時間に優位になる性質があります。食後に眠たくなるのは、副交感神経が優位になり身体を休めることで、食べ物の消化に必要なエネルギーを確保しようとするからです。
ストレスを感じると、交感神経が優位になります。交感神経は、活動期に優位になる性質がありますが、こうしたときには唾液の分泌量が減ってくる傾向があります。
唾液の量が減ると、お口の中が乾燥傾向になります。お口の中は本来、湿っているところなので、その粘膜は乾燥には弱い性質があります。乾燥することで、お口の粘膜が傷み、その結果むずむず感やかゆみとして感じることがあります。
2.原因別の治療法
2-1.歯周病
歯周病の原因は、歯周病菌といわれる細菌です。歯周病菌が産生する毒素が歯ぐきを傷めることにより、歯周病は発症します。歯周病を治すためには、この歯周病菌を減らすことが基本となります。
では、歯周病菌を減らすためにはどうすればいいのでしょうか?そこで大切になってくるのがプラークコントロールです。歯ブラシなどのCMで耳にしたことありませんか?
2-1-1.プラークコントロールについて
プラークとは、歯の表面を爪でこすった時に、爪の先についてくる白いカスの様なもののことです。この白いカスの正体は、いろいろな細菌の塊です。そこには、歯周病菌だけでなく、むし歯菌や真菌というカビの菌まで、たくさんの種類が存在しています。そのために、最近ではプラークとはいわず、バイオフィルムという言い方に変わりつつあります。
プラークコントロールとは、このプラーク(細菌)をコントロール(制御する=減らす)するということです。そのために大切なことが、日常のお口のケアと、定期的に歯科医院で受けるお口のクリーニングです。
日常のお口のケアとは、毎食後の歯みがきです。歯を磨く時に、歯ブラシを使いますが、歯ブラシは歯の表面を磨くのは得意なのですが、歯と歯の間に詰まったものを取り除くのは得意ではありません。そこで、歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯と歯の間までていねいに磨くことが必要となります。
定期的な歯科医院でのお口のクリーニングとは、日常のお口のケアでは取りきれないところの汚れや、歯ブラシではとれない歯石を取り除くことです。
歯石とは、歯の縁についている白い硬い石の様なもののことです。これは石の様に硬いので歯ブラシを使っても取り除くことは出来ません。歯科医院で専用の器械を使って取り除かなければなりません。歯石の裏も細菌が繁殖する温床になりますし、歯石がついているのが歯ぐきの真上になりますから、ここで細菌が繁殖すると歯ぐきを直に傷めてしまうことになります。歯石を取り除くことは、プラークコントロールの上で欠くことが出来ません。
そして、お口のクリーニングとは、歯についている汚れをとりのぞき、歯の表面をつるつるに磨き上げることです。つるつるした表面は、汚れがつきにくくなります。磨き上げることで、日常のお口のケアの効率を高めることが可能になります。
歯科医院を受診する間隔は、2〜6ヶ月です。受診間隔に幅があるのは、個人差が大きいからです。
こうして、自宅と歯科医院の二人三脚でプラークコントロールを確実なものとし、歯周病をコントロールします。
・歯周病治療については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|歯周病の進行度を自己チェック!進行別治療方法
2-2.親知らずの腫れ
親知らずが腫れてきた場合、細菌感染が原因であると思って間違いありません。こうしたときはまず、抗菌薬を歯科医院で処方してもらって飲みましょう。
一度腫れた親知らずは、抗菌薬で腫れが引いてもいずれ再び、腫れてきます。生え方もまず変わらないので、腫れやすくなる条件も変わることがありません。
そのために、一度腫れた親知らずは、抜歯するようになることが多いです。腫れると、周囲の骨が硬くなり抜きにくくなるので、何度も繰り返す前に抜いておいた方が無難です。
2-3.むし歯
むし歯によるむずむず感に対しては、むし歯の治療を行ないます。むずむず感程度のむし歯であれば、コンポジットレジンという歯の色に近い白色のプラスチック製の詰め物、もしくはインレーという小ぶりの金属製の詰め物で治すことが出来ます。
むし歯治療がおわったあとは、プラークコントロールを行い、むし歯の再発を予防しましょう。
2-4.歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりによるむずむず感には、歯型をとってマウスピースを作製して治療に当たります。マウスピースとは、厚さ3[mm]前後のプラスチック製の歯につけるカバーのようなものです。歯ぎしりや食いしばりの場合は、軟らかいタイプのマウスピースになることが多いです。
マウスピースをつけると、歯ぎしりや食いしばりの時に歯にかかる力を、マウスピースが受け止めてくれます。これにより、歯に直接力がかかるのを防ぎ、歯ぎしりや食いしばりによる違和感を改善させます。
・歯ぎしりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
歯ぎしりがもたらす体に悪い10のことと自宅での治し方
・食いしばりについては、以下の記事で詳しく説明しています。
今日からできる!食いしばりを治す7つの方法
2-5.磨き残し
歯と歯の間などの磨き残しにより、歯ぐきが炎症を起こして起こるむずむずとした感覚には、歯と歯の間をていねいに磨くことで改善を図ります。そこで使うのが、歯間ブラシやデンタルフロスです。どちらがいいかは、歯と歯の間にある隙間の広さによって異なります。隙間が狭いならデンタルフロスを、広いなら歯間ブラシを使います。歯間ブラシには、数種類のサイズがあります。隙間の広さに応じて、適切なサイズは違ってきます。
デンタルフロスや歯間ブラシのどちらが適しているか、どのように使えばいいかは、歯科医院で説明してもらうことが出来ます。
2-6.合っていない被せものや詰め物
縁の合っていない被せものや詰め物に起因するむずむず感には、被せものや詰め物を作り替えることによって、むずむず感を解消させます。
2-7.ストレス
ストレスによって起こる場合は、ストレスの解消を図るのが先決になります。ストレスを解消するために、趣味の活動をするのもいいでしょう。また、温泉につかって疲れをとって体力の回復を図るもいいです。
ストレッチ運動は、身体の血液の流れを良くする効果があり、疲れをとることができます。疲れをため込まなくなることでストレスからの解消が望めます。自然に触れるのもいいでしょう。日常生活から離れる経験は、ストレス対策に有効です。
3.歯がむずむずしたときやかゆいときにしてはならないこと
基本は、あまり触りすぎないことです。炎症を起こしているところは、腫れたり、出血しやすくなったりしています。こうしたところは、脆弱になっています。
指先には、意外と細菌が付着しているものです。腫れて弱っているところを指で触ることで、かえって腫れがひどくなることもあります。
また、爪楊枝等、先の尖ったもので歯ぐきをつつくのもやめましょう。歯ブラシ・歯間ブラシ・デンタルフロスのほうが、優しくケアすることができます。
弱っているところを、刺激しすぎることは逆効果ですから、気をつけましょう。
まとめ
歯にむずむずとした違和感やかゆみを感じる時、歯の周囲に痛みを伴うほどではない炎症が起きている可能性があります。
症状が起きた時は、原因に応じて治療を行なう必要がある場合があります。
治療が必要な際は、早めに歯科医院に相談するようにしましょう。
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