2022.08.12

インプラントを抜く必要性と撤去費用

インプラントを抜く必要性と撤去費用

インプラントは、顎の骨の中に人工の根をうえて、その上に差し歯をつける方式で失った歯を補うものです。保険診療の適応外なので、非常に高価になってきますが、入れ歯やブリッジにない利点も数多くあり、優れた治療法です。
しかし、インプラントは、永遠にもつものではありません。残念ながら、一度入れたインプラントを抜く必要がある場合があります。
そこで、どういった場合に取り除くことになるのか、その方法や費用などについてご説明します。

1.インプラントを抜く必要がある場合について

1-1.インプラントの細菌感染

インプラントは、骨に埋めるものですが、骨は基本的には細菌感染に非常に弱いところです。
もし、インプラント自体に細菌が感染したり、もしくはインプラントと骨の隙間に細菌が入り込んだりすれば、化膿して膿を出したり、強い痛みをもたらしたりするようになります。
こうしたことは、インプラント手術直後でもおこりうることですが、細菌感染が起きてしまった場合は、インプラントを取り除かなければなりません。

1-2.インプラント周囲炎

インプラント歯周炎
インプラントを入れた後、日々のお口のケアをしっかりとしていない、もしくは定期的に歯科医院でインプラントをメインテナンスしてもらっていない、など様々な理由で、インプラントの周囲の骨が吸収されてくることがあります。
これをインプラント周囲炎といいます。なお、骨の吸収とは、溶けてしまうことを意味します。
インプラントは、骨がしっかりしていないと支えることが出来ません。骨が吸収されてしまうと、グラグラとしてき、しっかりと支えられなくなります。
ぐらつき始めると、そのインプラントは、保存しておくことが厳しい可能性が高いです。

・インプラント周囲炎については、以下の記事で詳しく説明しています。
インプラントがグラグラ!?周囲炎を防ぐ大切な8つのこと

1-3.インプラントの破損

インプラントの人工歯の部分が破損したり、もしくはインプラントの根の部分が割れたりすることは、頻度は低いですがないわけではありません。
人工歯の部分であれば、その部分の補修だけで対応出来ることもありますが、そこが大きく破損してしまった場合、補修が困難ならインプラントを取り除かないと行けないこともあります。
また、これは製造上の問題が大きいようですが、インプラントの根の部分が割れてしまうことが、ごく稀にあります。このときも、インプラントは取り除くことになります。

1-4.神経麻痺

下顎の骨の奥歯の下方には、下顎管とよばれる下顎神経や動静脈が走行しているトンネルがあります。
下顎神経とは、オトガイ部(下顎の先のこと)や下唇の感覚の神経です。インプラント手術に際し、インプラントが下顎管に近いところもしくは、下顎管そのものに当たってしまった場合は、下顎神経がしびれる可能性があります。
もし、インプラント手術後に、オトガイ部や下唇にしびれが残った場合は、インプラントが下顎管に影響している可能性が考えられるため、インプラントを取り除かなければならなくなることがあります。

1-5.上顎洞炎

上顎洞
上顎洞とは、鼻の横、目の下にある骨の中の空洞のことです。蓄膿で膿がたまるところとして、知られています。
上顎のインプラント手術で、上顎洞の底を突き抜けてしまうと、上顎洞炎を起こす原因になります。上顎洞の底を貫いてしまった場合は、インプラントを取り除かなければならないことがあります。

2.インプラントを取り除く方法について

インプラントを取り除くことを、インプラント摘出といいます。インプラントの摘出方法は、インプラントの状態によって異なってきますが、基本的に局所麻酔の下に行なわれます。
全身麻酔になることは稀です。

2-1.骨が残っている場合

麻酔をしたあと、まずインプラントの周囲の歯茎を切開します。歯茎を切開すると、骨が出てきます。
そして、インプラントの周囲の骨をインプラントに沿って薄く一層削ります。こうしてインプラントと骨の間に隙間が出来れば、インプラントを摘出することが出来る様になります。

2-2.骨吸収している場合

インプラントの周囲の骨が高度に吸収している場合は、骨を削ることなく摘出することが出来ることがあります。

3.インプラントを摘出するための費用について

3-1.保険診療でインプラントを摘出できる医療機関の条件

合わなくなったインプラントを摘出する場合、歯科用インプラント摘出術という術式名称で、保険診療で摘出を行なうことが可能となっています。
ただし、これには条件があり、あくまでも他の歯科医療施設(診療所か病院かは問いません)で埋められたインプラントであることが必要です。つまり、摘出の対象となるインプラントの手術を行なった歯科医院や病院でインプラントを摘出する場合は、保険診療の適応外となるということです。

3-2.摘出前のレントゲン写真撮影

レントゲン写真
保険診療でインプラントを摘出する場合、どんなにぐらぐらになっていても、必ず摘出前にレントゲン写真を撮影することが要求されています。

3-3.保険診療でインプラントを摘出するときの費用

保険診療でインプラントを摘出する際には、事前に歯科医師による診断が必要となります。
摘出の適応と認められた場合、”インプラント不適”という病名が与えられ、保険診療で摘出することが出来る様になります。費用はインプラントの種類に応じて3種類設定されています。

インプラントの形別3種類

保険診療の費用は、処置ごとに点数で表されております。ちなみに1点は、10円を意味しており、仮に保険診療の自己負担が3割であったなら、この点数に3をかけた金額が、自己負担額となります。
なお、この費用は、インプラント1本当たりの摘出術の費用のみ含まれており、その他の初再診料、レントゲン写真、薬代などは含まれていませんのでご注意下さい。

3-3-1.人工歯根タイプ

現在、最も広く普及しているタイプのインプラントです。保険診療では、人工歯根タイプと称されています。この種のインプラントを摘出する場合は、1本当たり460点となっています。

3-3-2.ブレードタイプ

現在主流のタイプのインプラントが普及する前に、主流だったインプラントです。
現在のインプラントが、人工の歯根を埋め込むことに対し、このブレードタイプのインプラントは、漢字の”四”に似た板状の金属製の土台を埋め込み、そこから飛び出た部分に人工の歯をつけるタイプのインプラントです。ブレードタイプのインプラントの摘出費用は、1本当たり、1250点です。

3-3-3.骨膜下インプラント

これも、現在主流のインプラントとは異なる方式のインプラントです。
現在では、ほとんど行なわれていません。インプラントは、通常骨の中に人工の歯根を埋め込みますが、骨膜下インプラントは、骨の中には埋め込みません。
その代わりに、骨の上に骨に沿わせる形で土台となる部分をのせます。この土台の部分自体は、歯茎の下に埋まっていますので、直視することは出来ません。骨の形は人それぞれ異なりますから、骨膜下インプラントは1つ1つオーダーメードで作られます。
骨膜下インプラントの摘出費用は、1本当たり1700点となっています。

3-3-4.骨開削加算

なお、インプラントの摘出に際して骨を削った場合は、その費用が加算されます。これを骨開削加算といいます。骨開削加算は、各摘出術の点数の50%となっています。
つまり、骨を削ってインプラントを摘出した場合は、それぞれの摘出術の点数を1.5倍にした点数が摘出費用となります。

3-3-5.費用の具体例

上記だけでは、計算方法がわかりにくいと思われますので、具体例を提示します。

仮に、人工歯根タイプのインプラントを2本摘出するとし、その時に骨を削って摘出した場合、骨開削加算は460点の50%となりますので、(460点+230点)×2本=1380点が、インプラント摘出術の保険点数となります。
もし、自己負担割合が3割であったなら、医療機関の窓口で支払うインプラント摘出術の額は4140円となります。その他、再診料、処方箋代、薬代などがかかってきます。

3-4.保険診療で摘出出来ない場合

インプラント治療をうけた歯科医院や病院で、インプラントを摘出する場合は、前述の様に保険診療の適応外となります。その場合は、自費診療となってきますので、費用については、その歯科医院や病院にお問い合わせ下さい。

4.インプラント摘出術後の治療について

インプラント摘出術後の治療については、骨の状態に大きく影響されます。骨の状態とは、インプラントが入っていたところだけでなく、その周囲の骨も含めた状態を意味します。

4-1.インプラントの再手術が出来る場合

取り除いたインプラントの周囲に骨がしっかり残っている場合、位置を少し変えて再びインプラントをすることができることがあります。

4-2.インプラントの再手術が出来ない場合

インプラントを摘出した後、骨がしっかりと残っていない場合、残念ながらインプラントを再びすることは難しいです。
その場合は、インプラント以外の選択肢になります。具体的には入れ歯、もしくはブリッジです。

4-2-1.入れ歯

歯が残っている場合に、残された歯に金具をかけて安定を図る部分入れ歯と、全く歯が残っていない場合に適応される総入れ歯に分けることができます。
後述するブリッジとは異なり、歯を削ったりする必要がないのですが、違和感があったり、また毎食後外して洗わなければならないなどの、手間がかかる欠点があります。

4-2-2.ブリッジ

原則的に摘出されるインプラントが1本のみで、その両側に歯がしっかりと残っている場合は、入れ歯ではなくブリッジと呼ばれるタイプの被せ物で治すことができる可能性があります。
ブリッジとは、失われた歯の両側の歯に金属製の被せ物を装着し、それら被せ物をつなげることで、再び噛めるようにする被せ物のことです。インプラントとは異なり、歯を削らなければ装着できませんが、入れ歯よりも違和感が少ないのが特徴です。なお、入れ歯とは異なり、取り外すことはできません

・インプラント摘出術後の治療については、以下の記事で詳しく説明しています。
インプラントがもし失敗するとどうなるの?その後の治療法

まとめ

インプラント治療は、現在では確立された安全性の高い治療法のひとつになり、インプラント治療はかなり普及してきました。
一方でメンテナンスや骨の状態などに問題を抱えてしまった場合、インプラントを抜く必要性が出てきてしまいます。
抜いた後は、大きく歯茎が失われた状態になるため、再びインプラントをすることや、入れ歯、ブリッジなどが選択肢となりますが、難しい症例に発展する場合もあります。
インプラントがぐらついてきたり、気になる方は、主治医の歯科医師とよく相談して、どの方法が最もよいかを決めるようにしてください。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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