2022.09.02

虫歯の治療最前線!歯の神経を残すMTAセメント充填法

虫歯の治療最前線!歯の神経を残すMTAセメント充填法
虫歯が進行して、歯の神経のところまで達してしまったら、今までは歯の神経を取るほかありませんでした。しかし、近年MTAセメントとよばれる新しい虫歯治療材料が開発され、必ずしも歯の神経を取らなくても治せる可能性が生まれました。
今回はこのMTAセメントについて、適応する症状や治療法方など詳しくご説明いたします。

1. 虫歯

1-1. 虫歯の原因

歯の説明
多くの方に経験のある虫歯ですが、その原因は、一般的には虫歯菌と呼ばれているストレプトコッカス・ミュータンスという細菌です。
この細菌が、歯の表面のエナメル質という硬い部分を溶かして、虫歯を作ります。

1-2. 従来の虫歯治療

虫歯の進行イメージ
今までは、虫歯になった場合、エナメル質に留まっている様な初期の段階でしたら、そこだけを削って詰めることで治せていましたが、一度、歯の内部にある神経の部分まで虫歯が進行してしまった場合は、神経をとる治療をしなければなりませんでした。
ちなみに、この治療を”根管治療”といい、歯科医療者は”根治”と略してよびます。

1-3. 歯の神経をとることによる影響

”歯の神経をとる”というと、神経だけを取り除くという意味合いに感じられますが、実際には神経とともに歯に栄養を供給している血管も取り除いてしまうことになります。
現状の方法では、歯の血管と神経を区別して取り除くことが出来ないからです。その結果、歯には栄養がいかなくなり、一般にいう”歯が死んだ”状態になります。
そして、歯がもろくなり、かけやすくなります。虫歯菌への抵抗力も下がりますので、虫歯になりやすくもなります。
歯の神経をとった歯に、銀歯や金歯などの被せ物をする理由には、弱った歯を保護するということもあります。

・歯の神経の大切さについては、以下の記事で詳しく説明しています。
歯の神経をできるだけ残したい理由と除去せざるを得ない症状と治療法

1-4. 歯の神経をとる意味

では、なぜ神経をとらなければならないのでしょうか。それは虫歯菌に感染してしまうからです。
身体は細菌に感染した場合、免疫力により細菌を排除しようとします。
ところが、歯の神経の場合、虫歯菌が歯の表面から常時供給される状態となりますので、この免疫力が負けてしまうのです。そして、歯の根の先にまで虫歯菌が到達しますと、そこから出て行き、歯槽骨とよばれる歯を支えている骨に膿をためた袋を作るようになります。
こうならないように虫歯菌に感染した歯の神経そのものを取り除き、歯の内部を消毒することで無菌状態に持っていこうというのが、いままでの虫歯治療の基本的な考え方でした。

2. MTAセメント充填治療

歯の内部を消毒して無菌状態にもっていこうとしても、唾液自体にいろいろな細菌が含まれている以上、完全な無菌状態の維持というのはなかなか難しいものがあります。
そのため、虫歯の神経を残す方法が模索されるようになりました。
そこで開発されたものがMTAセメントという新しい歯科治療材料です。

2-1. MTAセメントとは

MTAセメント材
MTAとは Mineral Trioxide Aggregateの略です。これの成分は、本来歯に含まれているカルシウム系の物質です。
二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、酸化ビスマス、石膏というもので構成されています。
たいていの製剤は、粉と液体で構成されており、これらを練り合わせることで固くなり、作用を発現するようにされています。このとき、粉と液体を適切な比率で練り合わせることが出来るかどうかが、治療の成否を決めます。

2-2. MTAセメントの特徴

MTAセメントのpHはpH12と、強いアルカリ性を持っています。通常pHは9.5を超えるとほとんどの細菌が死滅すると言われていますので、このことから強い殺菌能力を持っていることがわかります。
しかし、歯の内部に充填する限りにおいては、人体に危険な影響はなく、安全性はとても高いです。
また、歯のエナメル質には象牙質という構造があります。虫歯に冒された象牙質の再形成を促進する硬組織形成作用もあります。
そして、封鎖性にとても優れており、隙間が少ないので、虫歯菌が侵入することは非常に困難です。

2-3. MTAセメント充填法の適する虫歯

MTAセメントの治療範囲
非常に性能のいい虫歯充填用セメントですが、あらゆる虫歯に使えるわけではありません。

①歯の神経がまだ生きている虫歯

虫歯が進行して、歯の神経のところまで達したとしても、直ちに歯の神経が死んでしまうわけではありません。
電気歯髄診断器を用いて、まだ、歯の神経がしっかりしていると判断出来る状態の虫歯の場合、このMTAセメントを詰めることで、歯の神経を残しつつ虫歯を治すことが出来ます。

②痛みの状態が軽い虫歯

虫歯になると痛みが生じます。あまりにも虫歯が進行すると、痛みさえ感じなくなりますが、そうでない場合は、初期虫歯を除いて痛みを生じることになります。
このときの虫歯の痛みがあまりにも激しいならば、歯の神経が広範囲に虫歯菌に冒されていることを意味しますので、無理に残そうとはせずに、歯の神経をとる治療をした方がいいと思われます。

③冷たいものだけでなく、温かいものにも痛みを感じる虫歯

冷たいものにしみるだけでしたら、虫歯は歯の神経のところまで進行している可能性は低いです。
MTAセメントを使わなくても、歯の神経を取り除かずに、虫歯の部分を従来の詰め物で詰めるだけで治せることが多いです。
もし、温かいものにも痛みを感じるようになり始めたら、歯の神経のところまで虫歯が進行していることを示しています。温かいものに痛みを感じ始めた頃であれば、MTAセメントを使えば歯の神経を残して、虫歯を治療することが出来ます。

④虫歯を削ったところ、神経のあたりから出血してくる虫歯

虫歯を削っていき、歯の神経が露出してきた際に、そこから出血してきた場合、これは歯の内部の状態がしっかりと保たれている、虫歯菌に免疫力が抵抗している状態を示しています。
このような、歯の内部の状態が比較的健全と判断出来る虫歯の場合は、歯の神経を取り除かなくても、MTAセメントを詰めることで虫歯の治療ができます。

2-4. MTAセメントのメリット

最大の利点は、MTAセメントの殺菌能力と硬組織形成作用にあります。
pH12の強アルカリ性により虫歯を殺菌します。これにより、虫歯がより内部に進もうとする動きを抑えることが出来ます。
また、虫歯でダメージを受けた象牙質を再度、作り出す作用がありますので、歯の神経を虫歯菌から保護しやすくなります。
そして、封鎖性がよく、隙間がほとんどないため、一旦固まってしまえば、新たに虫歯菌が侵入しにくいという利点もあります。

2-5. MTAセメントのデメリット

他の歯科治療材料と比べて、MTAセメントは非常に流動性がよく、固まるのに時間がかかるのです。
簡単にいいますと、粉と液を混ぜ合わせた際に、とても”シャバシャバ”なのです。そして固まるのに時間がかかります。
歯科医療従事者側としては、ある程度の粘度があったほうが詰めやすいですし、練りやすいです。
また、速く固まってくれた方が、患者側にとっては楽ですし、歯科医療従事者側としては、唾液が流れ込むリスクが低減出来ますのでいいのですが、現状の製剤はそうではありません。この点は、今後の改良されることを期待します。

2-6. MTAセメントの費用

実のところ、MTAセメントは非常に高価です。
保険治療の対象とはならないので、自費診療となります。MTAセメント充填法の値段は、各歯科医療施設で異なりますので、主治医とご相談下さい。

まとめ

従来の虫歯の治療では、歯の神経のところまで虫歯が進行した場合は、歯の神経をとらざるを得ませんでした。
歯の神経を取り除くと、虫歯の痛みは感じなくなるメリットがありますが、そのかわりに、歯がもろくなったり、虫歯菌に対する抵抗力を失ったりと、さまざまなデメリットを生じます。
歯の神経をとった歯は、金歯や銀歯などで被せて保護する必要もあります。
そこで、虫歯菌が、歯の神経をおかし始めたとしても、初期の段階であれば、MTAセメント充填法を用いれば、歯の神経を残したまま虫歯の治療を行なうことができる可能性が生まれました。
現状では、コストが高いという点がありますが、歯の神経は取り除くと、二度と再生することはありませんので、費用には現せない利点があると言えます。
まずは、主治医の先生とよく相談することをお勧めします。

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【監修・執筆】ハイライフ編集部監修

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